登山記録 富士山・伊豆 関東

富士山(2003年7月20日)

ついに待っていたこの日がやってきた。「富士山に登るのだ!」。ちょうど1年前に富士山に登ろうと計画していたが、メンバーが病気で入院してしまい、延期となっていたのだ。そもそも何故富士山に登りたかったかというと、フジテレビの「スマスマ」の影響だ。特番でゲームに負けた中居君と剛君は罰として富士山に登らされる事となり、2人は文句も言いつつひたすら辛い思いで登るが、頂上に着いた時には感動もひとしおで、お互い抱き合って万歳三唱していたのだ。この達成感を味わってみたい、しかも1人ではなくてパーティーでだ。1人で登って万歳三唱するのは恥ずかしいし、それにパーティーで登ったほうがより達成感を感じられ感動も分かち合えると思ったのだ。

富士登山に向け、新規に用意した山道具はレインウェア・ヘッドライト・ザック・ザックカバーの4品だ。富士山は標高が高い事もあり、天候が変わりやすいと聞く。雨が降ったら着ているものは濡れてしまい、濡れた後の道のりは最悪な気分になるに違いない。コンビニで500円で売っている使い捨ての雨合羽でも良いかなとも思ったが、今後の登山で使う事になるであろうから、上下別々のセパレートタイプのレインウェアを購入した。そして今回は深夜から登り始め、昼に下山という0泊2日の強行日程であるため、ヘッドライトも購入。ついでに今後の夢であるテント泊登山のために大型のザックとザックカバーも購入した。

登山当日、富士あざみラインのジグザグ道を車で登り、深夜0時に須走口新五合目駐車場に到着。道路脇に路上駐車の列が延々と続いており、結果は分かってはいたが念のため、駐車場まで行ってみるが、やはり駐車場は満車であった。梅雨明け3連休という事もあり、相当な人数が富士山に挑んでいるに違いない。係員に路上駐車するように進められ、結局延々と続く路上駐車の列の最後尾に車を停める事となった。五合目に少し滞在すると高山病の予防になると聞いていたため、車内で30分ほど仮眠する事にする。

仮眠後に車から外に出ると霧が発生しており、いまにも雨が降りそうな気配だ。他の登山者達がレインウェアを着ていたため、我々も真似をしてレインウェアを着て出発する。車道を歩き、新五合目の須走口登山口に到着。靴紐やザックの紐等をしっかりと締め直し、ついに念願の富士登山のスタートである。

ヘッドライトを点けて歩き始める。こんなに小さなヘッドライトで先が見えるのか心配していたが、十分先が見通せる位の明かりを照らしてくれているので安心だ。歩いてすぐに古御岳神社に到着。神社で安全祈願のお祈りをし、樹林帯の道を歩く。黙々と歩いていると霧が晴れ、レインウェアを着ている意味が無い事に気付く。結局雨は一度も降らず、意味の無いレインウェアを脱いで再スタートする。樹林帯の道を抜けると本五合目の林館に到着。他のメンバーはここで金剛杖を購入。金剛杖は断面が八角形の長い木の杖で、富士山の各山小屋で1,000円で販売されている。そして各山小屋ではこの杖に焼印を押してくれるサービスがあり、富士登山の記念にもなるのだ。僕はストックを持っているのでさすがに購入できずに少し羨ましくなる。

本五合目からの登山道は、草がちらほら生えているのみの岩場に変化する。どうやらこの辺が富士山の森林限界のようだ。ここから先は高い木が一本も生えておらず、周りは低い草木と岩だらけだ。周りは岩だらけであるが登山道は足で踏んだだけで崩れてしまうような不安定な岩等は無く、踏み固められているので安心だ。ストックを有効に使いながら、登山道を登ると六合目の瀬戸館に到着。深夜3時なのだがシーズンであるため、山小屋は営業している。ここで飲み物を購入して休憩タイムとする。小屋の若い従業員と話したところ、この時間にここに居たのでは頂上で御来光を見る事は出来ない事が発覚する。ただし須走口登山道は太陽が昇る東側に面しているため、六合目付近でも御来光を見る事が出来るとの話であった。

頂上で御来光を見る事は出来ない事が分かったが、少しでも高い位置で御来光を拝みたいものである。溶岩のジグザグ道を進み、4時頃に七合目の太陽館に到着すると、既に御来光を見るために起き出した人やこれから頂上に向かう人達で一杯だ。御来光は見たいが、こんなに人のいる騒がしい場所では見たくない。できればメンバーのみで雲から太陽が出る瞬間を落ち着いて見たいものだ。少しでも人から遠ざかろうと思い、太陽館には寄らずに先を急ぐ。10分程歩くと背中側からヘッドライトが必要無い位の明るさがやって来た。まだ太陽は出ていないが、雲は下から太陽に照らされて綺麗なオレンジ色に変化している。御来光はもう間近だ。登山道を少し外れた平坦部に荷物を置き、メンバーで御来光を堪能する事にする。よく考えると僕は朝日を見るのは25年の人生の中で初めての事だ。毎年正月に初日の出を見ようと思い、朝まで頑張って起きていようと思うが、結局睡魔に襲われて寝てしまい、一度も見られずにいたのだ。人生初の朝日が富士の御来光とは何とも嬉しい限りである。さすがに今回は外にいるので寝てしまう事は無いだろう。この瞬間をしっかりと目に焼き付けるのだ。

4時30分頃になると、水平線の雲の下に隠れていた太陽がついに顔を出す。「これが富士の御来光か!」人生初の御来光を見て余りの感動に手を合わせて拝んでしまった。誰が見てもこの御来光には感動するだろう、付近にいた他の登山者も「おぉーっ!」「わぁーっ!」と感動の声を上げていた。それにしても素晴らしい御来光だ。言葉では伝えられないので写真を撮る事とし、メンバーで写真を撮り合う。ついでに僕の趣味のパノラマ写真撮影も行う事が出来たので、これで家に帰ってからも富士の御来光が楽しめるだろう。

七合目付近から見た御来光。

7合目付近のパノラマ写真を見る

朝日を背にしながら5時に再出発する。ひたすら延々と続く登山道を本七合目の見晴館、八合目の江戸屋、本八合目のトモエ館・胸突江戸屋の順に登る。この辺の道は全く変化が無いので歩いていて辛いだけでつまらない。本八合目では須走口登山道では見られなかった人の列が目に止まる。どうやらこの本八合目で富士登山で一番人気のある吉田口登山道と合流したようだ。上を見上げると物凄い登山者の列だ。各登山者の上着の色がカラフルで、まるで万国旗が動いているようだ。トモエ館と胸突江戸屋の間の登山道を抜け八合五勺の御来光館に向かう。

登山道からの眺め。

登山道からの眺め。

登山道からの眺め。登山道からの眺め。カラフルな色の粒は登山者の上着の色で、延々と列を作って登っているのが分かる。

八合五勺の須走・吉田口登山道最後の山小屋である御来光館に到着する頃には、夜中から歩き通してきた疲労が蓄積され足が動かなくなっていた。それに標高が高いせいか少し息苦しい感じがする。メンバーの一人は高山病となり頭痛に悩まされており、とても辛そうだ。ここから先は各メンバーのペースで歩く事とし、頂上で再会する事とした。八合五勺から上を見上げると鳥居が見える。頂上も間近と思い、ゆっくりと自分のペースで歩いて鳥居に到着するが、この鳥居は九合目の鳥居で頂上はまだ一合先であった。九合目から頂上までは本八合目の合流点よりも更に人で混雑していた。この地点まで来ると疲労でもう一歩も足が動かないという登山者が登山道の端に座り込んでいるのが目立つ。ここから先は延々と続く長蛇の列で、前の登山者のお尻を見ながら頂上まで歩くという道のりだ。前の登山者のペースに合わせ、急な段差の登山道を登りきると、久須志神社の鳥居と狛犬が見え始め、8時に念願の富士山頂上に到着した。

富士山頂の山小屋。富士山頂の山小屋

早速先に到着しているメンバーと合流しようと探すが、余りの人の多さに中々見つからない。一人迷子状態になっていると、逆にメンバーが僕を見つけてくれて、やっと合流する事ができた。メンバーと再会し、富士登山の成功を喜び分かち合う。それにしても、山頂には山小屋が立ち並び、本当にここが日本最高峰なのか一瞬疑ってしまう。売店にはお土産屋が並び、食堂まで用意されており、地方の錆びれた観光地より施設が充実しているのではないかと思うほどだ。ちなみに富士の山頂は晴天ではあるが、頂上から下が雲に覆われており、駿河湾や青木ヶ原樹海といった景色を望むことが出来なかった。とはいえ、日本最高峰に到達出来た事で展望など望めなくとも満足感だけで十分であった。メンバーの一人が高山病による頭痛に悩まされていたため、山頂での記念写真を撮って早々に下山する事にする。

各山小屋の間の道を通り、少し登ると大日岳に到着。大日岳は山小屋付近から数十m高いだけのピークであるが、ここからは富士山の火口を見る事ができた。富士山の火口は斜面に万年雪が残っており、直径約800m、深さ約200mと大迫力だ。ここで富士山頂のパノラマ写真を撮ろうとするが、三脚が倒れてしまうほど風が強く、撮影は断念。火口を背に記念写真を撮影し、吉田・須走口下山道に向かう。

富士山頂の爆裂火口。左上のピークは日本最高地点の剣ヶ峯。富士山頂の爆裂火口。左上のピークは日本最高地点の剣ヶ峯。

大日岳より山小屋を望む。大日岳より山小屋を望む

下山道は各山小屋へ物資を運ぶブルドーザー道を利用したもので「砂走り」で有名だ。砂走りという位だから地面の土質は砂であるのだが、実際歩いてみると砂埃が舞って目や口に砂が入るため、余り楽しいものでは無い事が分かった。それに我々はハイカットの登山靴を履いているので問題は無かったが、スニーカーで砂走りをしようものなら歩く度に靴の中に砂が入り、歩きにくい事この上無いといった感じであろう。あまりにも砂誇が酷いので、鼻と口にタオルを巻いてひたすら走って下ると、あっという間に八合目に到着。登るのにあれだけ苦労したのに下るのはあっという間である。八合目は吉田口と須走口への下りの分岐点になっており、間違って吉田口に下ってしまわないように注意する。須走口を示す案内板の通りに進み、砂走りの下山道を更に下る。下山道は全て砂走りかと思っていたのだが7割が砂走り、残り3割が岩歩きという具合で、約2kmの道のりを下りきると砂払い五合目の吉野屋に到着。ここは五合目で終点かと思ってしまうのだが、頭に「砂払い」が付き終点手前である。どの登山客もここで登山終了と勘違いしているらしく、まだ先がある事にがっかりしている。ちなみに、ここの山小屋の人達はそれを分かっているので、休憩所を設けて商売に勤しんでいる。何だか悔しくなったので、「絶対にここでは何も買わない!」と皆で意味の無い決意を固め、何も買わずに本当の終点である新五合目までの道を進む。

須走口下山道のパノラマ写真を見る

山頂直下の須走口下山道。山頂直下の須走口下山道

砂走り後の下山道。
砂走り後の下山道

砂払い五合目を過ぎると下山道は一転して樹林帯の道に変化する。木の根の段差が至る所にあり、疲れた我々の足には何とも厳しい道だ。転ばないように慎重に 30分程下ると、古御岳神社が見え始め、11時30分に須走口新五合目駐車場に到着した。登りは休憩も含めて約7時間、下りは約2時間30分という道のりであった。下山後は日帰り湯の「天恵」で汚れを落とし、数時間仮眠して帰路に向かった。

初の富士登山の感想であるが、頂上に達した事もそうだが御来光を拝めた事が何よりも嬉しかった。あんなに素晴らしい御来光を見る事が出来て本当に幸せである。だが、結局4月から行っていた登山トレーニングなど意味がなかったのではないだろうか。実際他のメンバーはトレーニングなどせず、中には出発直前まで仕事していた者もいたのだが、結局僕よりも先に頂上に到着していた。トレーニングよりも登山当日の体調を整え、栄養を沢山取ったほうが良いに違いない。まぁ何にせよ素晴らしい御来光を拝め、怪我無く無事に下山出来たのだから良しとしよう。

なお、後で分かったのだが、我々は日本の最高峰に到達していない事が判明した。最高峰は剣ヶ峯(3,775m)という地点であり、我々が登った大日岳(3,750m)とは20mの差があるのだ。悔しいので今度は1合目から剣ヶ峯までの行程で登る事としよう。

日程・行程

2003年7月20日(日)  曇りのち晴れ
須走口新五合目-富士山-須走口新五合目

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