5時起床。テントの入り口から顔を出して外を確認すると少しガスっていたが、時間が経つとガスが上がり、テント内から朝日の写真を撮影。
テントを出て、目と鼻の先にある春別岳の山頂に移動。昨日はガスっていて何も見えなかったが、山頂からは1917峰と1903峰の間からカムイエクウチカウシ山、ナメワッカ岳などの山々が見えた。残念ながら北側の幌尻岳周辺やエサオマントッタベツ岳はガスに覆われたままで顔を出してはくれなかったが、数時間したらガスが切れて顔を出してくれるだろう。朝焼けの展望を楽しんだ後は朝食を食べるためにテントに戻る。
昨日と同じサタケの牛飯にコンビーフを入れた雑炊を食べ、テントを撤収。
再び山頂に登ってすぐに1917峰に向かおうとしたが、先程まではガスに覆われて見えていなかった幌尻岳やエサオマントッタベツ岳が見事に聳えており、たまらずに再度パノラマ写真を撮影。
後悔しないくらい写真を撮影した後は、今度こそ1917峰に向かう。春別岳から1917峰の間は、昨日の後半同様に岩稜とハイマツが交互に続く稜線歩きが続く。昨日難しく感じたP1751付近の藪歩きに比べると道に迷うようなところもなく、ハイマツに慣れてきたのもあって、藪を漕ぎながら泣きそうになる事はなかった。
登山道上の日の当たらない岩陰に可愛いイワウメが咲いていた。花期は7~8月であり見られるとは思ってもいなかったので嬉しかった。
稜線上からは左に紅葉最盛期の十ノ沢とその先に札内岳と十勝幌尻岳、後ろを振り返るとナメワッカ岳とその先に幌尻岳が見える最高の展望だ。明日も晴れの予報であり、何かに急かされる事もなく、最高の稜線漫歩が出来て最高だった。
難所は無いが、昨日の後半の岩稜帯の歩きに比べると少しだけ厳しい岩歩きとハイマツの藪漕ぎを交互に続けて登っていく。
春別岳から約1時間半で1917峰に到着。1917峰は名無しで山頂標識も無いピークであるが、展望に関しては日本各地の名峰に負けておらず、素晴らしい展望が広がっていた。今まで沢山の山頂からパノラマを眺めてきたが、間違いなくTOP10に入るであろう大展望だ。たまらずにパノラマ写真を撮影し、パノラマ写真を撮影した後は、東側の斜面に寝転がって札内岳と十勝幌尻岳を眺めながら1時間以上山頂でのんびり大休止する。
山頂でのんびりしていると、春別岳方面から単独行の男性が到着。話を聞くと昨日はP1760でテント泊したとの事だった。お互いにカムイエクウチカウシ山をバックに記念写真を撮影し、単独行の男性にお礼を伝えて長らく楽しんだ1917峰を後にする。
1917峰を少し下った箇所にテントが張れるスペースがあった。
1917峰から1903峰分岐までは、右奥にカムイエクウチカウシ山を眺めながら岩稜とハイマツを交互に登っていく。
1917峰を下った最低鞍部の1732コルには、九ノ沢カールを眼下に眺められるテント場があった。
1732コルのテント場から九ノ沢カールを眺めると、2013年に墜落した軽飛行機にブルーシートが被せられている姿が確認できた。
1732コルからハイマツの稜線を登っていくと、標高約1,830m付近でGTさんが座って休憩しており、そこからは見事なカムイエクウチカウシの北面の景観広がっていた。休憩して暫く経過すると、単独行の男性が到着し、話を聞くと九ノ沢から1732コル経由でここまでやってきたとの事だ。この男性は水不足のため「今日は八ノ沢カールまで絶対に進まないといけない」との事であり、「九ノ沢ではブルーシートの下の辺りから水がコンコンと流れており、そこでもっと水を汲んでくればよかった・・・。」と嘆いていた。
単独行の男性と九ノ沢を眺めながら沢山の情報を教えて貰っていると、九ノ沢に人影が現れる。「あれ人だよね?」と3人して人だと思っていたが、あまりにも動かないのでカメラで撮影後に液晶モニタでズームして確認してみたところ、単なる日陰であり人間の目なんて当てにならないものだと思った。
単独行の男性が出発して、少し間をあけて我々も出発。カムイエクウチカウシ山を眺めながら、ハイマツを漕いで登っていく。
今日は休憩ばかりで大して歩いていないのだが、もう既に長く連続して歩けなくなっており、立ち止まって息を整えながら歩くを繰り返し、何とか1903峰分岐に到着。1903峰は片道20分程と聞いており、往復で40分かかる計算だ。今の自分の体力と相変わらずペースが落ちないGTさんの体力を考えると、1903峰を往復してカムイエクウチカウシ山まで登る頃には相当離されてしまう事が想定できた。という事で1903峰に登らずに先に進む事を伝え、1903峰に向かうGTさんの後姿を撮影し、休憩せずにカムイエクウチカウシ山へと向かう。
1903峰分岐から1730コルまでは下りであり、しかもハイマツに覆われていない稜線の左側(東斜面)の淵を歩く感じの道であり、今までに比べると非常に楽な歩きが続く。
途中の東斜面で物凄い数のヒグマの掘り返しがあったが、痕跡はかなり古いものだった。稜線上は既に晩秋であり、ヒグマもエサの無い稜線には興味がないのだろう。今回は4日間歩いて、稜線上では一つも新しいヒグマの痕跡は見当たらなく怯える事もなかった。
1730コルの手前で振り返って1903峰を撮影していると、丁度GTさんが山頂に到着したようで写真に写っていた。僕よりも一回り年齢が上なのだが、物凄い体力でちょっと羨ましかった。
楽な下りが終わると1730コルに到着。コルには一張限定だがテントが張れるスペースがあった。
1730コルからはカムイエクウチカウシ山へと再び登り返す。登り返しの最初は稜線左側(東斜面)の淵の藪を漕いで登っていく。
低木の藪を漕いで稜線中央に登り返していくとそこから先は山頂まで延々と急斜面のハイマツの登りが続く。
途中でヒグマの糞を見かけたが、カッサカサに乾燥していて恐怖感は湧かなかった。
登っては立ち止まって休憩し再び登るを繰り返してるいると、1730コルとカムイエクウチカウシ山の中間辺りまで到達しており、あと残り少し登れば明日も含めて登りはなくなるので少し気が楽になる。気持ちに余裕が出てきて後ろを振り返って歩いてきた稜線を撮影していると、「fukaちゃ~ん!」とGTさんの声が聞こえてきて、大きな声で「何~!」と返事をするが返答はなかった。後で聞いてみたら、1903峰分岐で「コルまで行く」と言っていたのに、コルにいないので確認したとの事だ。ちなみに、自分が伝えた「コル」はカムイエクウチカウシ山とピラミッド峰のコルの事であり、後々考えるとやはり行動は体力の無い者に合わせるか、完璧な意思確認が必要だと思った。
山頂直下のハイマツはかなり濃く、背丈よりも高いハイマツのトンネルのような箇所もあり、腕力を使ってハイマツを掴んで登っていく。この頃になると藪漕ぎにも慣れてきていて効率よく藪を漕げるようになっており、体力は残っていないもののそんなにキツいとは感じなかった。
山頂直下の鞍部で下を向いて歩いているとガンコウランの実を発見。付近にはクロマメノキの実も生っており2種類の実をむさぼり食っていると、GTさんが到着して猿のような姿を見られてしまった。
GTさんと合流して相変わらず続くハイマツの急登を登っていくと鞍部に到着し、遂にカムイエクウチカウシ山直下のテント場に到着。山頂は目と鼻の先にあり、普通ならザックを置いてすぐに山頂に向かってパノラマ写真を撮影するところであるが、疲れているのでそんな元気もなくテント場付近でゆっくりしてから山頂に向かう。
テント場から少し登るとすぐに憧れのカムイエクウチカウシの山頂に到着し、GTさんと固い握手を交わす。山頂からは歩いてきた稜線が北にずっと連なっており、ずっと不安だった沢歩きや藪漕ぎの稜線を無事歩き通せて本当にホッとした。この山に登るために体重も落として、努力で何とかなる事は全てやってきたつもりなので、久々に達成感のある山頂だった。
山頂でゆっくりと展望を楽しんだ後は、テントを張ってのんびりと過ごす。音楽を聴きながらテント内で余裕をかましていると、夕焼けを楽しみにずっと山頂でスタンバイしていたGTさんから声がかかる。山頂に行ってみたがあまり焼けておらず、良い写真は撮れなかった。
晩御飯は計画通り3日連続カレーの予定だったが、体がカレーを受け付けない。明日の朝食べる予定のサタケの牛飯(雑炊)なら何とか喉に通りそうなので、何とか腹に入れ、完全に日が暮れてから山頂で夜景の写真を撮影してから早めに寝た。
春別岳(7:35)⇒1917峰(9:04/10:23)⇒1732コル(11:16)⇒標高約1830m付近(11:54/12:27)⇒1903峰分岐(12:50/12:52)⇒カムイエクウチカウシ山(14:44)(幕営)
行動時間:7時間9分