登山記録 甲信越 北アルプス(後立山)

鹿島槍ヶ岳・五竜岳(2005年6月24日)

登った山

鹿島槍ヶ岳、布引岳、五竜岳、大遠見山、中遠見山、小遠見山

日程

2005年6月24-26日

行程

1日目
八王子駅-信濃大町駅-爺ヶ岳登山口-登山道(石畳付近にてビバーク)
2日目
石畳-種池山荘-爺ヶ岳-冷池山荘-布引岳-鹿島槍ヶ岳-キレット小屋(テント泊)
3日目
キレット小屋-北尾根ノ頭-五竜岳-アルプス平駅-遠見駅-十郎の湯-飯森駅-松本駅-塩尻駅-八王子駅

1日目の記録

昨年の7月、初の北アルプス山行として鹿島槍ヶ岳と五竜岳を選択したのだが、2日間ともガスガスで、山頂からの展望を全く望めずに悔しい思いで下山した。しかしこれで終わる僕では無い。山頂からの展望を望まずして山に登ったとは言えないので、梅雨の合間の晴れの週末を狙い、再び同じルートで鹿島槍ヶ岳と五竜岳を目指すのだ。とは言ってもこの時期の登山道の状態は分からず、もしかすると稜線上に雪が残っていて去年と同じタイムで歩ける保障が無い。という事で金曜日の夜間も利用して鹿島槍ヶ岳と五竜岳に挑む事とした。

18:39 信濃大町駅

午前中に仕事を切り上げ、午後半休を使って信濃大町駅までやってきた。日がある内に少しでも種池山荘がある稜線に近付きたいため、駅前で写真を1枚撮って急いでタクシーに乗り込んだ。

19:04 爺ヶ岳登山口

タクシーの運転手と山話で盛り上がり、20分程であっという間に爺ヶ岳登山口に到着。運賃は5,500円だった。それにしても単独行のタクシー利用は金がかかる。2人なら半額、3人なら当たり前だが1/3の金額となって経費削減出来るのだが・・・。今は月2回の登山なのでリッチに金は使えるが、これから始まる夏山シーズンでは雨が降らない限り毎週山に行く事になると思うので贅沢は出来ない。登山って「意外と金がかかる趣味なんだな」と再認識して先に進む。

19:06 警告メッセージ

とにかく今年の残雪量は半端ではないらしい。この警告メッセージを見て、このまま行くか引き返すかは個人の判断である。今回はピッケルこそ持ってきていないが代わりにストックを持ってきているし、アイゼンも12本爪と軽アイゼンの両方を持ってきており、何よりも今回の山行よりも厳しい冬山を経験してきているので何の不安も無く迷わず先に進む。

21:24 ビバーク

ヘッドライトで足元を照らしながら2時間程登ったところで、疲れて眠くなったので、「石畳」付近でビバークする事にした。今日は夜遅くなろうとも種池山荘がある稜線まで到達してテント泊する予定だったが、僕の予定はあって無いようなものなのでどうでもよくなってしまった。植物に影響の無い石畳の上にグランドシートを引き、テントをシュラフカバー代わりにして顔だけ外に出した状態でシュラフに入り、満天の星空を見ながらそのまま眠りについた。それにしても今思うとよく蚊に刺されなかったな~。

2日目の記録

04:44 残雪残る斜面を通過

昨日は稜線まで到達出来なかったので、遅れを取り戻そうと3時起床の3時半出発を計画するが、荷物を詰める際にシュラフが行方不明となっている事に気付く。ヘッドライトで登山道を照らして探してみるが、いくら探しても見つからない。恐らく荷物を詰める際に崖下に転落してしまったものと思われるが、シュラフを救出に行くにもヘッドライトの明かりでは探し切れないので、結局夜が明けるのを待ち、シュラフを救出して出発する頃には4時20分となってしまった。 爺ヶ岳登山口の警告メッセージにも書かれていた「雪の斜面のカット作業」を行った箇所を通過。カットして頂いたおかげで普通に歩く事が出来た。だけどもしもここでコケて尚且つピッケルを斜面に打ち込めない場合は、奈落の底に真っ逆さまなので、良くて重症悪くて死亡だろう。

05:07 種池山荘手前

去年来た時にはこの辺一帯がお花畑だったと思ったのだが、今年はやはり雪が多いらしく、まだまだ一面雪に覆われていた。

05:15 種池山荘

種池山荘に到着すると、外に出て景色を眺めていた小屋の女性従業員に「早いですね~」と声をかけてもらった。小屋に到着=稜線上に到達であり、これからの山頂までの道程は左右に大展望が広がる最高の稜線歩きを楽しめ、早く左手に広がる剱岳・立山の山並みを眺めたいので、休憩せずにそのまま爺ヶ岳に向かう。

05:21 稜線より剱岳を望む

種池山荘から爺ヶ岳を目指すと進行方向左手にドーンと剱岳の展望が広がっていた。剱岳も去年登ったがガスガスで山頂からの展望を望めなかったので、いつかリベンジが必要な山である。今度は早月尾根から山頂を目指すプランを考えているが、どうやら今年は行けそうにないので来年の実行になるだろう。

05:55 爺ヶ岳南峰

左右に展望が広がる気持ちの良い稜線歩きを続けていると、爺ヶ岳南峰に到達し、山頂からは立山連峰・後立山連峰の大展望を望め最高の気分だ。

爺ヶ岳南峰のパノラマ写真を見る

06:06 爺ヶ岳より槍ヶ岳を望む

爺ヶ岳からは遥か遠くに槍ヶ岳も望む事が出来た。この時期はどうしても空気中の水分量が多いため、視界はクリアではなく、遥か先の山々は霞んで見えてしまうが致し方ない。

06:32 爺ヶ岳中央峰

続いて爺ヶ岳の中央峰に到達。ここからは鹿島槍ヶ岳がグッと近づいて見え、形の良い双耳峰の鹿島槍ヶ岳の展望に見入ってしまった。

爺ヶ岳中央峰のパノラマ写真を見る

07:00 爺ヶ岳北峰直下より鹿島槍ヶ岳を望む

爺ヶ岳北峰直下から見る鹿島槍ヶ岳は圧巻だった。

爺ヶ岳北峰直下のパノラマ写真を見る

07:31 冷乗越

爺ヶ岳の南峰・中央峰と登ったので、地図に記載のある北峰もついでに登ろうかと思うが、登り口が分からずそのまま冷乗越まで降りて来てしまった。

08:02 冷池山荘

冷池山荘に到着し、コーラを買って朝食を食べる。山荘に泊まった方々は既に鹿島槍ヶ岳に向かっていると思われ、山荘内は従業員以外誰もおらず、シーンとしていた。

08:25 残雪残る稜線を進む

朝食を食べ終え、鹿島槍ヶ岳に向かうと、残雪残る稜線歩きが始まる。日差しはとても強く、尚且つ雪面の照り返しが物凄くて肌がビリビリだ。

09:25 布引岳

鹿島槍ヶ岳一歩手前のピークの布引岳に到着。ここからもやはり立山連峰の展望が素晴らしい。ここで2人の単独行者に出会うが、話を聞くと何だか思いは一緒のようで少し嬉しくなってしまった。

布引岳のパノラマ写真を見る

09:45 お花畑と剱岳と立山

稜線上の登山道脇にはお花畑が広がっており、花と新緑と残雪残る山々とのコントラストが素晴らしい。

10:29 鹿島槍ヶ岳

鹿島槍ヶ岳の山頂に到達。山頂からは今まで見てきた立山連峰の展望の他に更に五竜岳・唐松岳・白馬岳と続く後立山連峰北部の山並が続き、360度ぐるっと大パノラマに感激だ。山頂ではまだ6月であるのにセミが鳴いており、もう完全に夏到来といった感じであった。ラジオを聞くと地上では30度を越す猛暑により熱射病で倒れる人も現れたと放送されているが、それはこの山頂でも同じで、僕も余りの暑さに少しフラフラしてしまった。

鹿島槍ヶ岳のパノラマ写真を見る1鹿島槍ヶ岳のパノラマ写真を見る2

11:50 鹿島槍ヶ岳北峰を望む

余りの展望の良さに山頂では1時間以上も留まってしまった。でも朝早く出発したおかげで楽々の行程なので、問題はない。北峰への分岐点では何故か北峰に興味を示さず(疲れていたとも言う)、そのまま左に向かって八峰キレットへ進む。

鹿島槍ヶ岳北峰直下のパノラマ写真を見る

12:45 八峰キレット核心部

もろいガレ場に梯子に鎖場が連続する八峰キレットを通過する。多分キレット小屋手前の左の写真の箇所が八峰キレットで一番危険な箇所だろうなとは思うのだが、梯子・鎖場を何度か経験していて、三点支持確保が出来る方であれば問題なく歩けるだろう。

13:03 キレット小屋

キレットを通過して、怪我無く無事に無人のキレット小屋に到着。ここで先に行くか停滞するかで迷う。五竜岳手前の稜線上でビバークする事も考えたが、稜線上で天候が荒れた場合、風が強く逃げ場所も無く危険であろうから、この案は却下。後は五竜岳に向かうか、ここに停滞するかのどちらかなのだが、今から五竜岳に向かっても到着は夕方になってしまい、良いパノラマ写真も撮れないだろうから、結局まだ時間は早いが小屋前の通路に申し訳ないがテントを張らせてもらい、今夜はここで停滞する事とした。

13:03 キレット小屋より剱岳を望む

去年はガスガスで何も見えなかったので、キレット小屋から剱岳が見えてビックリだ。

13:21 物凄い立地条件のキレット小屋

余りにも暇なので、五竜岳方面に散歩に行って上からキレット小屋を眺めてみたが、よくもまぁこんな場所に小屋を建てたなぁと思える程凄い立地条件だった。

18:50 立山連峰に夕日が沈む

夕方になると辺りは一面雲に覆われて夕立が降り始め、もう夏なんだなぁと感じてしまった。19時頃になると立山連峰に夕日が沈み、幻想的な景観に見とれてしまった。

キレット小屋のパノラマ写真を見る

3日目の記録

05:39 キレット小屋を出発

時計のアラームが3:30に鳴り、外を確認するも、付近は霧に覆われており、テントを濡らしていた。30分置きに起きて外を確認するが、相変わらずガスガスなので、「今回も五竜岳の展望は望めないのか~」と諦めムードでテントを撤収し、キレット小屋を出発。

06:03 五竜岳を目指す

天気予報では富山・長野両県共に夕方まで晴れの予報であったのだが、稜線上はガスに覆われていて見通しが悪い。樹林帯の登山道でこのような状態で歩くと恐らくイライラしただろうが、このルートは起伏が激しくバリエーションに富んでおり、暇しない のだ。そして僕のお気に入りのルートなので、ガスガスでも気分良く歩く事ができた。

キレット小屋-五竜岳間登山道のパノラマ写真を見る

06:53 北尾根ノ頭

北尾根ノ頭に到着するも、視界は益々悪くなり、もう何も見えないので、休憩して先に進む。

07:41 ガスが抜け、立山連峰が顔を出す

既に諦めムードで五竜岳に向かっていたのだが、時間が経つにつれ、どんどん雲が抜けていき、遠くまで見通せるようになってきた。

08:25 あと少しで五竜岳

ガスが完全に抜け、G5・G4と通過すると、一人の男性とすれ違う。ちなみに鹿島槍ヶ岳~五竜岳間ですれ違った人間はこの方1名だけ だ。キレット小屋は来週末からオープンであり、昨日は無人だったので、恐らくオープン準備に向かう小屋の関係者だったではなかろうか?昨日幕営禁止のキレット小屋にテント泊した事もあり、特に会話も せずすれ違った。

G4のパノラマ写真を見るG5のパノラマ写真を見る

08:30 ウルップソウと立山連峰

登山道脇にはウルップソウの他、高山植物が沢山咲いており、歩いていて気分が良い。

09:02 五竜岳

五竜岳手前の急傾斜を登り詰め、山頂部に到達。今日は相変わらずスカっと晴れず、見通しが悪いが、一通りの山々を眺む事が出来たので大満足だ。後立山連峰北部の白馬岳方面を望むと、まだまだ先に広大な尾根は続いており、休みさえあればこのまま日本海の親不知まで歩きたい思いだった。

五竜岳のパノラマ写真を見る1五竜岳のパノラマ写真を見る2

09:54 五竜山荘へ向かう

五竜山荘へ向かう途中で長野側の斜面は完全に雲に覆われてしまった。相変わらず長野側から雲が湧くので、この山域の天候パターンが大体分かってきた。雲は湧いてきたが、後は下るだけ なので何の心配もなく下山する。

10:04 五竜山荘

五竜山荘に到着し、缶ジュースを買って山荘前の休憩所で昼食タイム。

10:20 残雪残る遠見尾根を下るパーティー

五竜山荘前の休憩所から、残雪豊富に残る遠見尾根を下るパーティーを見学。歩きっぷりを見る限り、腰が引けて雪山馴れしていない感じで何度も転んでおり、見ているこちらがヒヤヒヤしてしまった。

10:31 滑落現場を目撃!

TVドラマ等で食事中に衝撃的な出来事が発生すると、手からフォークなどを落としたりするシーンがあるが、あれは本当だ。先程見学していたパーティーの内の一人が雪の斜面を50m以上滑落し、食べていた菓子パンを落としてしまったのだ。とりあえず急いで小屋に向かって従業員を呼びに行くと、従業員が双眼鏡を持ってやって来て現場を確認。滑落した方は数分固まっていたが、仲間が現場に駆けつけると自力で立ち上がる姿が見えたので、従業員共々ホッと一安心。従業員に聞くと、先週も爺さんが一人滑落したらしく、この程度の滑落は慣れっこのようだった。ちなみに左の写真左上にパーティーの面々、右下の雪の斜面の黒い点が滑落者だ。目で見る限りかなりの距離を滑落したが、斜面に岩が出ていなかった事が幸いして怪我は無かったようだ。あー、ヒヤヒヤした。

10:42 白岳直下をトラバース

山荘の従業員に聞くと、先程滑落したメンバーが下った白岳経由の尾根沿いで下るよりも、「白岳直下をトラバースしたほうが早いし安全だよ」と言われたので、その通りに白岳直下をトラバースする事にした。見た目は大した事なさそうだったので、アイゼンを付けるかどうか迷ったが、ザックの上蓋に軽アイゼンを入れており、すぐに取り出せる状態だったのでとりあえず軽アイゼンを装着して下る事とした。

11:05 急斜面にビビる

僕の人生でこれほど恐怖に襲われた事はない。五竜山荘から見た限りでは大した斜度ではなさそうだったのだが、歩いてみると結構な斜度があり、完全にビビってしまった。しかも雪の状態は最悪のシャーベットで、軽アイゼンなんて全く意味が無い。12本爪アイゼンはザックの奥に入れていたため、面倒臭がって軽アイゼンを選択した自分を恨む。そして先程滑落した方は斜度が緩くなった所で自動的に止まったが、このトラバース道ではコケたら恐らく谷底真っ逆さまだろうから、とにかく「コケたら終わり、コケたら終わりなんだぞ!」と自分に言い聞かせて一歩一歩慎重に下る。山荘から僕を見ると恐らく腰が引けていたのだろうなぁ。あー、恥ずかしかった。

11:12 トラバース完了

ふ~、何とかコケずにトラバース完了。ビビりまくって下ったので、夏道なら数分の所を30分もかかってしまった。ちなみに持って来ていた12本爪アイゼンを装着していれば何ら問題なかったのだが。このような事もあるので、登山口に「要ピッケル、要アイゼン」と書かれた警告板が置かれているのだ。何のために今まで山に登ってきたのか、冬に雪山を経験してきたのか少し反省。このトラバースは本当に怖いので、少しでも爪の多いアイゼンを装着して下ってください。

遠見尾根のパノラマ写真を見る

11:26 トラバース箇所を振返り見る

遠見尾根を下る際に後ろを振り返ると、先程のトラバースした斜面の全体を見る事が出来た。本当にコケたら谷底真逆さまで、山荘の従業員はトラバースしろと言ったが、こうやって見ると白岳の尾根沿いを下ったほうが良かったような気もする。結局どっちが良いのかは分からなかった。

11:38 遠見尾根を進む

遠見尾根を進んでいると、滑落したパーティーに追い付き「お疲れ様です」と声をかけるも返事は無い。恐らく挨拶する余裕も無いのだろうから、追い越させてもらい、さっさと先に進む事とした。心配して小屋の従業員まで呼んだのにな~。

12:23 中遠見山

遠見尾根の各ピークからは五竜岳や鹿島槍ヶ岳の展望を望めるのだが、山頂部は雲に隠れて全容を望む事は出来なかった。今度は厳冬期にこの辺まで登り(五竜岳は厳しいのでパス)、真っ白な五竜岳・鹿島槍ヶ岳の展望を望んでやろう。それにしても遠見尾根は異常に虫が多く、この山旅一の虫の多さに嫌気が差してしまった。どこを見ても虫虫虫といった感じで、目や鼻や口に虫が入りそうで気持ち悪かった。

13:10 地蔵ノ頭

白馬三山の展望が良い地蔵ノ頭に到着。夏山の午後は雲が湧くのは仕方が無く、前回同様白馬三山の展望は望めなかった。でもここまで来ればゴールは間近なので、気が楽になった。

13:17 五竜アルプス山野草園

五竜アルプス山野草園の歩道を下るが、花は全くと言っていいほど咲いていなかった。時期が少し早かったのかな~。

13:24 ロープウェー アルプス平駅

高山植物も咲いていないため、観光客の姿も少なく、何だか寂しい感じだった。暑くてずっと食べたかったソフトクリームを食べ、ロープウェーに乗り下界まで楽して下る。

十郎の湯

ロープウェーとおみ駅に到着。汗だくで、このまま電車に乗ると他の方々に迷惑なので、売店の従業員に教えて貰った温泉の十郎の湯で一風呂浴びて着替える。日焼けで皮膚が痛くて長く湯船に使っていられなかったが、やっぱり温泉は良いものだ 。

15:35 飯森駅

温泉内の食堂で 美味しい手打ち蕎麦を食べて、座敷でゆったりしてから飯森駅にやってきたが、単線でしかも無人なのでびっくりした。(とか言いつつ自分の田舎は電車すら走っていなかったりするのだが・・・。)座敷でゆったりしてしまったおかげで、電車は数分前に出発してしまっており、結局家に着いたのは21:30になってしまった。

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