登山記録 八ヶ岳・霧ヶ峰・美ヶ原 甲信越

赤岳・横岳・硫黄岳(2005年2月5-6日)

日程・行程

2月5日(土)
立川駅-茅野駅-美濃戸口-美濃戸-行者小屋-中山展望台-行者小屋(テント泊)

2月6日(日)
行者小屋-赤岳-地蔵仏-横岳-硫黄岳山荘-硫黄岳-赤岩の頭-赤岳鉱泉-行者小屋-美濃戸-美濃戸口-茅野駅-八王子駅

1日目の記録

週間天気予報を見ると長野中部の土日の天気は2日とも晴れの予報であるため、冬山超初心者ながらも南八ヶ岳の主峰赤岳に登頂する事とした。

金曜日、会社の終業のベルが鳴ると同時に帰宅し、立川駅21:24発のあずさ号で茅野駅に向かう。茅野駅に23:23に到着して改札を通過すると、この後は3時台のムーンライト信州号まで通過列車が無いために窓口は一時閉鎖となり、待合室のストーブも消され、待合室には僕一人という状況となった。おかげで誰に邪魔される事もなく、朝までホカホカのシュラフの中でぐっすりと眠る事が出来た。

6:50 美濃戸口

茅野駅6:10発のバスに乗り、美濃戸口に到着。ちなみに乗客は僕を含めてたったの5人ではあったが、美濃戸口に着いてみるとマイカー登山者や前夜からテント泊している方々もおり登山者は多い。登山届を提出し、スパッツを取り付けて美濃戸に向かう車道を進む。

7:40 美濃戸

美濃戸までは車で入れるため、背後から車が来る度に一々路肩に寄らねばならず、気分良く歩けなかった。美濃戸に向かう途中にある、二股の林道(どちらを通過しても美濃戸に着く)では左側ルートを進んだのだが 、4WD車が雪にはまって身動きが取れない状態となっていた。「大丈夫ですか~」と声をかけるも「大丈夫!」とお手伝い不要の様子なので先に進む。結局、徒歩の僕が4WD車よりも早く美濃戸に到着してしまったのだが、あの登山者達は無事美濃戸まで辿り着けたのだろうか?

10:23 南沢登山道

2ヶ月振りに20kg超のザックを背負って歩いたせいかすぐにバテてしまう。10人程の登山者に抜かれ、酷いペースでヘロヘロになりながら進むと前方に赤岳が見えてきた。

10:30 行者小屋

何とか行者小屋に到着。到着する頃には天候も回復して青空が見え始め、横岳・赤岳・阿弥陀岳の山容が目の前にドーンと飛び込んできた。すかさずカメラと三脚をザックから取り出し、写真撮影を堪能する。行者小屋前のテント場ではこれから帰る方が残してくれた幕営スペースが空いており、整地せずに楽してテントを張ることができた。

行者小屋のパノラマ写真を見る

12:00 中山展望台

赤岳に登って帰って来る時間はあるのだろうが、慣れないラッセルで疲れた僕にはもうそんな体力は残っていない。中高年登山者が行者小屋に到着するや否や赤岳を目指しているというのに、何とも情けない。でもこのまま何もせずに日暮れを待つのも暇なので、体力の無い僕でも行ける行者小屋近くにある中山展望台に行ってみる事とした。前回来た時にはガスっていて何も望む事は出来なかったのだが、今日は遮る物は何も無く、硫黄岳から赤岳までの稜線や阿弥陀岳を一望出来る素晴らしい展望が目の前に広がっていた。

中山展望台のパノラマ写真を見る

13:00 行者小屋

再び行者小屋に戻って来ると、大学生のグループが雪上訓練をしており、眺めながら勉強させてもらった。夕方になると、赤岳鉱泉から従業員がやって来てしっかりと一人千円のテント場代を徴収し、冬季用の水場の場所を教えて去っていった。厳冬期に水が豊富に使えるとは何ともありがたいテント場だ。そもそも何で凍らずに水が流れているのか不思議だったが、雪を溶かして水を作らなくてもよくなったので助かった。夜になるとテント内でも-11℃となり、寒がりな僕はシュラフから一歩も出られない状態となり、寒さで何度も目覚めながら朝を迎えた。

2日目の記録

6:30 行者小屋出発

朝起きるとポリタンに残っていた水は全て凍っていた。これでは1kgの重りとなるだけなので、ポリタンに昨夜寝る前にテルモスに入れておいたお湯を入れ、シャカシャカかき混ぜながら氷を溶かして水をつくる。こんな事しなくてもちゃんと水場があるので、今度ここに泊まる時にはポリタンは空にして寝る事にしよう。朝食を食べ、日が出始めたところでスパッツ・アイゼンを取り付けて赤岳に向かう。赤岳に向かう文三郎尾根を登る途中、登山道では無い方向に進むグループがおり、目先をそちらに向けると、何と赤岳直下の壁に取り付いて山頂を目指していた。

7:40 文三郎尾根分岐点

行者小屋では無風であったが、文三郎尾根の階段付近から強風が吹き、歩行が妨げられるようになる。強風は赤岳と中岳の分岐点まで続き、分岐点では案内掲示板にしがみ付いて強風をやり過ごす。

7:58 赤岳に向かう

この先もずっと強風が続くのかと思いきや、分岐点を赤岳方面に進むと赤岳の南壁に回り込むようになり、歩行を妨げていた強風も一時的にパッタリと止み歩きやすくなった。

8:10 赤岳直下の鞍部

岩壁のクサリ場をアイゼンを利かせながら無事登り詰めると赤岳直下の鞍部に到達する。恐らく赤岳の山頂は物凄い強風で三脚は立てられないだろうと思い、念のためにここでパノラマ写真を撮 っておく事にした。

赤岳山頂手前のパノラマ写真を見る

8:30 赤岳山頂

僕は赤岳とは相性が良いみたいだ。前回と同様に僕の視界には雲一つ無い快晴の青空が広がり、富士山、権現岳、南アルプス、中央アルプス、御岳山、乗鞍岳、北アルプスと何もかもが望める360度のパノラマが広がり最高の気分だ。しかも思ったよりも風は強くなく(2kgの三脚は押さえていないと吹っ飛ぶが)、山頂には僕一人だけというパノラマ写真撮影には最高の状況であり、山頂で一人ぐるぐると回りながらパノラマ写真を撮りまくる事が出来た。

赤岳のパノラマ写真を見る

9:15 地蔵仏付近

朝食のカップラーメン1杯で得たカロリーは赤岳登頂で全て使い果たしてしまったらしく、腹が「グー」と鳴ったので餅入りどら焼きを食べて栄養補給する。赤岳を地蔵尾根方向に下ると赤岳展望荘付近で、昨年の12月に机上講習に参加させてもらったマウンテニアリングサービス「風の谷」主宰の山田哲也さんご一行に出会う。一言先日のお礼を言いたかったのだが、ご一行はアンザイレンして登っているため、邪魔するのは悪いと思い、また、雪山初心者のくせにこんな所を一人で歩いている事がばれると怒られそうなので、そそくさとそのまま通り過ぎる。(単に気付かれていないとも言う)

10:45 横岳奥ノ院

当初は地蔵尾根を下って行者小屋に向かおうと思っていたのだが、こんな最高の天候でこのまま帰るのは勿体無いと思い、硫黄岳まで縦走する事にした。横岳の登り始めはいきなり梯子の登りから始まるが慎重に通過。一箇所トラバース(上の写真の山頂直下部)があり、「雪崩でも起きたらどうしよう」と考えてしまったが、トレースがあったので落ち着いて慎重に通過し、何度か岩峰を上り下りすると横岳の主峰となる奥ノ院に到着。ここにも全く人の気配は無く、山頂からの360度の大展望を独り占めだ。う~ん、本当に来て良かった。

横岳のパノラマ写真を見る

11:15 硫黄岳山荘

せっかく登って来たのが勿体ないのだが、硫黄岳に向かうため横岳を下る。硫黄岳山荘に向かう途中、2人組と単独行者の計3人とすれ違い挨拶を交わす。途中クサリ場や梯子を下る箇所があったが、北海道への帰省の際に、毎日アイゼンを履いて雪かきをしたり裏山に歩行訓練に行っていた成果が出たのか、問題なく通過する事が出来た。台座ノ頭直下のトラバース道を下るとあっという間に硫黄岳山荘に到着した。

11:34 硫黄岳に向かう

硫黄岳山荘から硫黄岳を望むと、地図には20分と書いてあるが、見ると結構な登りが待っており泣きそうになる。7つのケルンに導かれながら硫黄岳に向かう。

11:50 硫黄岳山頂

赤岳で食べたどら焼きのカロリーも消費してしまい、腹が減った状態での硫黄岳への登りは辛かった。飯を食えば良いのだが、登山道は風の通り道となっており、再び強風が吹きすさんでいたため、寒さにより飯よりも先に足を動かして登る。7つの大きなケルンに導かれながら登ると、広々とした硫黄岳の山頂に到着。これまた山頂には誰もおらず、ここでもパノラマ写真撮影を堪能する。ちなみに、後で撮影した画像を確認すると疲れていたのか数カットを撮影するのを忘れ、270度分位しかパノラマを撮影出来ておらず、がっくり。やっぱり疲れていると、ロクな事が無いものだ。

12:10 赤岩の頭付近

早く行者小屋のテントに戻って暖かい飯を食べたいため、硫黄岳山頂を数分で後にし、赤岩の頭にも寄らずに赤岳鉱泉へ向かう。赤岩の頭を下ると見事な樹氷とその先に赤岳が聳え立っており、すぐさまカメラに手が向かう。

12:50 赤岳鉱泉

赤岩の頭から赤岳鉱泉の間は踏み固められており、更に樹氷が綺麗なため、歩いていてとても気持ちが良かった。最初にラッセルしてくれた方々には頭が下がる思いで下ると赤岳鉱泉に到着。赤岳鉱泉にはHPで見て実際に見るのを楽しみにしていたアイスクライミングフィールドの「アイスキャンディー」があるのだ。早速見学に向かおうとすると、既にアイゼンを脱いでいた事もあり、アイスキャンディー裏で見事につるっとコケてしまって、皆に見られて何とも恥ずかしい思いをした。アイスキャンディーには若い女性が取り付いており訓練中だった。

赤岳鉱泉のパノラマ写真を見る

13:45 行者小屋

アイスクライミングの練習見学を終え、中山乗越を越え、行者小屋に戻ってきた。赤岳鉱泉で小屋内に入るためにアイゼンを脱いでそのままの状態で行者小屋に向かったのだが、1歩進むごとに滑って後退する箇所もあり、アイゼンを装着したほうが結局楽に中山乗越を越えられたと思う。面倒臭がり屋はこれだから困る。

15:25 美濃戸

暖かいご飯を食べ、テントを撤収して美濃戸へ向かうと1時間程で到着する事が出来た。夏に同じルートを下った時と殆ど変わらない時間だが、前日に大雪でも降ろうものなら倍以上の時間はかかるだろう。本当にラッセルしてくれた先人達に感謝である。

16:10 美濃戸口

美濃戸山荘前の休憩所はグループ登山者で満員だったので、居場所が無く、仕方が無いので無休憩でそのまま美濃戸口への林道を進む。これまた往路と一緒で背後から車の気配がする度に路肩に移動して道を譲りながら進むと美濃戸口に到着。16:35発茅野駅行きのバスに乗る予定だったのだが、深夜に時計のライトを付けるつもりが寝ぼけて時間を1時間早めてしまったらしく、僕の時計は17:10を示していた。何も知らずに最終のバスは行ってしまったと勘違いし、美濃戸口の八ヶ岳山荘前に停まっているタクシーに乗り込んでしまう。時間が1時間早まっている事を知ったのは駅前近くになってからであった・・・。

今回は、雪山初心者のくせに赤岳のみならず横岳と硫黄岳まで縦走してしまった。雪山登山は技術も勿論必要ではあるが、それ以上に雪山で一番重要なのは天候だと思う。天候が悪ければ幾ら技術に長けていても、登れるものも登れなくなってしまう。今回は天候が良く、風もそんなに強くはなかったため縦走出来たようなものだ。今回の登頂を自分の力と思わず、過信せずに今後も無理せずに雪山を経験して行こうと思う。

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