北海道にある実家の用事で金土日の3日間で帰省。土曜日に半日であれば山に登る時間が確保できたので、我が故郷の山である岩部岳に登ることにした。
もう何年も前から岩部岳登山は計画しており、福島町千軒地区にある綱配橋の先にある林道を登山口として登ろうと考えていたのだが、北海道の山のバイブルである一人歩きの北海道山紀行の記録で、千軒トンネルの上から刈払い道が山頂まで延びている事を知る。調べて見ると、地形も判断し易く、何よりも長い林道歩きをしなくてもよいのが決め手となり、急遽千軒トンネル上から岩部岳を目指す事とした。
実家から福島トンネルまでは10分かからない位で到着。トンネルを千軒地区方面に抜けてすぐ左にあるスペースに路駐しようかと思っていたが、除雪されていない。歩道にも雪がてんこ盛りであり、路駐は無理と判断。トンネルを引き返して福島町側のトンネル入り口にあるお地蔵さんの横の除雪スペースに車を停め、ここからトンネル上の尾根に取付く事とする。
腐れ雪で足を取られるのが予測できたので、最初からワカンを履いて急斜面に取り付いたのだがこれは失敗。斜度が急でワカンが邪魔くさかった。何とかワカンで登り切ったが、モナカ雪の急斜面で思いの外手強く朝からヒヤ汗をかいた。
急斜面を気合いで登りきって右手の岩部岳方面に進むと、千軒地区側のトンネル出口付近からの斜面との合流点とぶつかる。
せっかくなので、本来登るはずだった千軒地区側の斜面を見に行くと、樹林が切り開かれており凄く登りやすそうだった。このポイントからは朝日に染まる千軒岳も見えた。
夏や秋なら歩きやすそうな尾根道だが、実際は踏み入れる度に埋まるモナカ雪で初っぱなから体力を使う。
送電線鉄塔からは眼下にトンネル手前の道路が見えた。
送電線鉄塔から先は痩せ尾根が続き、アップダウンを繰り返し、急斜面を登り切って少しいくと標高点287。正直なところ、ここまでは40分位で着くだろうと思っていたが二倍近くかかっており、「こんなペースで半日で岩部岳を往復出来るのか…?」と不安になった。
標高点287から先はほぼ平らな道が続く。一歩踏み込む度に30~40cmは沈むモナカ雪も終わり、雪面が締まって歩きやすくなる。
右手に植林帯が見えてくると道が二俣に別れている標高点341が近い。
標高点341に到着。スタートから雪に足を取られて疲れているので、腹は減っていないが後々の事を考え、菓子パンを一かじりして二股を右に進む。
池ノ岱山と七ツ岳が見えた。東京に来てから登山を始めたため、小さな頃に何気なく見ていた山にちゃんとした名前がある事を今知る事が出来て嬉しい。七ツ岳は林道が通行止めなので難しいが、池ノ岱山は松前半島の山々が見える方向の斜面に木が生えておらず、展望が良さそうなので今度登ってみよう。
トンネル上部からの嫌らしい尾根と違い、ほぼフラットなので鼻歌を歌いながら進み気分は最高。
しばらく行くと、天国のような平らな道が終わり、再び登りとなる。
標高点425と697の中間付近で後ろを振り向くと、松前半島の山々の展望が見事に広がっていた。岩部岳の山頂に到達してもこれだけの展望は目にできそうもないので、ここで終わりにしてしまおうかと思ったが、やっぱり故郷の山なので意地でも登る事にした(笑)。
花の百名山「大千軒岳」。厳冬期に山頂から景色を見た人はごく僅かだと思う。カメラを貸すから、誰かパノラマを撮ってきてほしい。
人間のトレースは無いが、野生動物のトレースだけは至る所にあった。恐らくウサギだと思うのだが、結局最後まで一度も動物とは出会えなかった。
標高点697までが地味に長い。先程良い展望を見たのと、左手に見える岩部岳へと続くアップダウンが疲れた足に応えそうで、何度も心が折れそうになる。
何とか標高点697付近に到達。福島町の漁港も見えるが、次の標高点704とその先の岩部岳を見て、「マジか…。」と一人呟いた。
一旦下って小さなクレバスに足を取られながら登って行くと標高点704。後は一旦下って登り返すと念願の岩部岳だ。標高点704付近からは、福島町の岩部地区と津軽海峡越しに青森県が見えた。初めてのエリアの山やアルプスの山々も素晴らしいが、故郷の山から小さな頃に遊びに行った地区や海が見える景色も良いものだ。
標高点704を一旦下って登り返すと岩部岳に到着。と書くと簡単だが、見た目よりも斜面は急。しかも進行方向右側はクラストしておりワカンの爪は刺さるが急、左側は踏み込むと地肌まで埋まるほどのモナカ雪で足元が崩れる。アイゼンに履き替えれば不安は払拭するが、面倒臭いので木を活用したり雪面に手を突っ込んで結局最後までワカンで登りきった。
標高点704から雪が降っており、展望も利かないので、証拠写真を一枚撮影し、ご褒美のガラナを飲み即下山する。(どうでもいいけど、本当はコアップガラナが飲みたかった。)
GPSがあるので怪我さえしなけりゃ這ってでも帰れるが、やっぱり視界が利かなくなると少し不安。と思っていたら、再び晴れ間も見えて一安心。
標高点697まで頑張って登り返したら、後はほぼ下り。天気も回復してきて、再び周囲の山も見えてきた。
標高点341。さすがに疲れたので、今日初めて座って菓子パンとガラナで昼食を取った。
福島トンネルが近くなると、気温も上がって最悪な状態のグズグズの雪面に足を取られる試練の下りが続く。
送電線鉄塔を過ぎ、後は路駐スペースまでの急斜面を下るだけなのだが、ここは尻セードで標高差約60mを一瞬で下りきってゴール。一番心配していた箇所だったのだが、思った程危なくなかった。
やっとの事で故郷の山である岩部岳に登る事ができた。紅葉が綺麗なエリアでもあるので、秋に再び登ってみたいが、ヒグマが怖いので恐らく一人では登らないと思う。
行程
福島トンネル(6:30)→標高点287(7:45)→標高点341分岐(8:07/8:10)→標高点697(9:36)→標高点704(10:00)→岩部岳(10:35/10:38)→標高点704(11:01)→標高点697(11:20)→標高点341分岐(12:01/12:07)→標高点287(12:25)→福島トンネル(13:00)
合計時間:6時間30分
平面距離:11.36km
標高差:651m
累積標高(上り):1,370m