今年のお盆の北海道帰省は9連休であり、最大の目的は日高山脈の1839峰の登頂(勿論墓参りも)だった。しかしながら、去年に引き続き今年のお盆時期の天気予報は晴れマークが殆ど無く、とても日高の山に登る決断が出来ない予報ばかり。運が良い事に最近のマイブームは「花」である。花であれば晴れ間が無くても十分楽しめるので、なるべく雨に降られずに花を楽しめるエリアを探す事にし、歩き残していた日高のアポイ岳と大雪山の1泊2日の花巡り縦走をする事に決めた。
前日は兄貴に車(フィット)を借りて、道南の最果てにある実家から約7時間車を走らせ、アポイ岳から約30km手前の新ひだか町にある道の駅「みついし」まで移動し、19時過ぎに到着。早速後部座席を倒しフラットにして車中泊で一晩を明かそうとするが、フィットは後部座席を倒すと若干段差が出来てしまい段差が丁度腰に当たるため少し違和感があった。とは言うものの寝てしまえばそんなのは大した問題にはならず、翌朝4時に工事関係車両の騒音でたたき起こされるまで爆睡できた。
車中泊で一番の問題は「快適過ぎて寝坊する」事であるが、早朝から工事関係の騒音でたたき起こされたため、今日は問題なし。海浜公園や温泉施設が併設されている最高の道の駅の付近を少し散歩してからアポイ岳の登山口に移動する。
5時過ぎにアポイ岳の登山口となるアポイ山麓公園内にある登山者用駐車場に到着。登山者用駐車場は、一般の駐車場よりも路面状況や位置に関してグレードが下がる事が多いと思うが、路面は舗装されておりフラット。しかもトイレ付きで「これなら昨日ここまで来ればよかった」と思った。この山には今後花の最盛期に再訪するのは間違いないので、次回はここで車中泊しよう。
3日前に上った大千軒岳と同様、出発時点では自分だけという状況。ザックに鈴を取り付けて花のアポイ岳にいざ出発。
登山口から少し歩くと入山届を記載する登山届ポストがあり、どうやらここが登山口のようだ。ノートに情報を記載して先に進む。
登山口からすぐ先にある橋を渡ったところに大きな「熊出没注意」の看板があり、描かれているヒグマがリアルでちょっと怖かった。
登山口からしばらくは車も通れる程の幅の立派な道を歩き、水かさの少ない川を渡渉する箇所で「おねがい」の標識が目に止まる。登山口は3日前に綺麗に洗ったばかりであるが、念のため川の水で靴底をジャブジャブ洗ってから先に進む。
靴を洗った小川を渡ると山歩きの雰囲気となり、煩い程鈴を鳴らしながら歩いていく。途中で登山道沿いに1ヶ所だけシャクナゲが咲いていたが、標高200m以下、しかも8月なのにまだ咲いているとは北海道らしいなと思った。
相変わらずビビって鈴をリンリン鳴らしながら二合目、三合目、四合目と緩い傾斜の登山道を登っていく。三合目では木に大きな鐘がぶら下がっており、鈴よりも遥かに大きい音をガンガン鳴らしてから先に進む。正直、自分で自分を見たら、「こいつ煩いなぁ」と確実に思う位鈴を鳴らしていたと思う。だって怖いんだもん・・・。
途中で五合目手前のつづら折りの登山道あたりで、藪のガサガサ音を聞いて恐怖レベルがMAXになるが、どうやら小動物か何かだったようで一安心。つづら折りの道を登り切ると赤レンガで目立つ「五合目山小屋」に到着。小屋からは視界が開け、アポイ岳が目の前に見えていたが逆光で眩しくて被写体とするにはキツかった。
小屋前で息を整えてから、またまた木からぶら下がっている大きな鐘をガンガン鳴らして馬の背へと登っていく。
六合目と七合目の間の登山道の岩と岩の間にいきなりアポイ岳固有種のアポイマンテマが咲いておりびっくり。正直最初はニガナとかどこでも見られる花が咲いていて、やっとの思いで探してアポイマンテマを目にする感じでいたのだが、いきなり目の前に現れたので少し驚いた。今日は雨に降られる前に早々に山頂に向かい、下山時にゆっくり花を撮影する事に決めているので、軽く1枚だけ撮影して登っていく。
七合目付近から高い木々は少なくなり、眼下に展望が広がっており、左を望むと雲海の下に様似町の海岸線が見えており幻想的だった。そして、何気に前日確認した今日の天気予報は雨の予報であったが山の上は晴れており、3日前に登った大千軒岳に続けて2回連続なので、「俺ってもってるなぁ」と思わずにはいられなかった。
馬の背に到着。360度展望が利くパノラマエリアであるが、調子に乗って雨に降られるのも嫌なので、パノラマもお預け。先に山頂に向かう。
山頂に向かう途中で登山道沿いに高山植物がネットで囲われており、実験をしているようだった。
途中で初めて目にするチシマセンブリなどが沢山咲いている花エリアが現れるが、下山まで我慢我慢。後で撮影しようと思ったら雨に降られ、「だったら先に撮っておけばよかった・・・。」というパターンも何度も経験しているがあと数時間は天気が持つ予感を信じて先に進む。
頂上と幌満お花畑への分岐は、迷うことなく頂上方面に進む。
登山道は難しい箇所も無く、頂上目掛けてひたすら登っていく。左を望むと吉田岳とピンネシリが見えており、森林限界を超えて切り立って連なる日高独特の景観が素晴らしかった。
あまり寄り道せずに登った割にはコースタイムとそんなに変わらないタイムで山頂に到着。今回、ネット上の登山記録やコースガイドの類は殆ど調べずに登ったのだが、山頂部は樹林に覆われており、少しがっかり。「さっきまで左右に展望が開けていたじゃないかー!」と思うがこればかりは仕方がないので、山頂から少し東寄りに移動し、木の上に登って180度分だけパノラマ写真を撮影。逆光でかなり眩しかったが、日高南部の山並みは見えており、雰囲気だけは伝わった。南には襟裳岬方面の海岸が見えており、やっぱり海岸線に近い山は海が見えていいなと思った。
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折角なので吉田岳まで足を延ばそうとも考えたが、往復で1時間以上はかかり雨に降られるのが嫌なのと、下山後に層雲峡までの運転(下道で280km)が控えている事を考えるととても足が向かなかった。とか言いつつ、花の優先順位は高く幌満お花畑へと下る。
北海道らしい白樺の木々の合間の登山道を下っていき、途中で後ろを振り返るとアポイ岳の山容が見え、途中でパノラマ写真も撮影するのを忘れずに下っていく。
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幌満お花畑に到着するが、イメージしていた広大な草原帯ではなく、ハイマツが広がるお花畑であり、ロープで囲われた登山道沿いに僅かに花が咲くスペースがあるだけで少し拍子抜け。しかも標識には1997年に100株ものヒダカソウが盗掘にあった旨が記載されており一人で悲しくなるが、ふと登山道沿いを見るとエゾルリムラサキがまだ咲いていて一気に笑顔になる。高山植物の中で一番好きな花がミヤマムラサキであり、エゾルリムラサキはミヤマムラサキの変種と言われている。エゾルリムラサキにはミヤマムラサキには無い白い剛毛があり、可愛い顔して毛深い娘を想像してしまうが、顔が可愛いから許してあげよう(笑)。幌満お花畑にはこの時期なので種類は少ないが、エゾルリムラサキ以外には、ミヤマワレモコウ、ネジバナ、キンロバイ、イブキジャコウソウなどの花が咲いていた。
花の写真撮影を楽しんだ後は、あまり傾斜のない樹林帯のトラバース道で分岐まで戻る。途中で綺麗なカナブンに出会った。
幌満お花畑から約20分で再び分岐に戻る。分岐付近で今日初めて登山者に出会い、会話の内容からすると地元の親子のようだった。そんなに長い時間もかけずに山頂に到着できるため、地元の人にしてみるとわざわざ早朝から登る必要が無い山なのかもしれない。分岐から馬の背までの間にはまだまだ沢山の花が咲いており、特にチシマセンブリに力を入れて写真を撮影しまくった。
馬の背に到着する頃には3グループ程の登山者とすれ違い、そもそも花の撮影に夢中でヒグマの事なんて忘れていたのだが、これで下山中にヒグマを気にする必要が無くなって少しホッとする。パノラマ写真を撮影し、ここから五合目の山小屋までの間も、登山道沿いに咲く花の撮影を楽しんで下っていく
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逆光も緩んできてアポイ岳を撮影し、五合目の山小屋に到着。五合目には子供連れの観光登山のグループがおり、子供たちは夏休みの思いで作りで楽しそうだった。
五合目の山小屋からはノンストップで往路と同じ道を戻り、無事下山。登山者用駐車場のすぐ横にあるアポイ岳ジオパークビジターセンターでアポイ岳の地形や地質や自然などを勉強してから、すぐ近くにあるアポイ山荘で格安の500円で超綺麗な温泉(湯は塩素臭い)を一人で堪能し、帰省3回目の登山は終了。
温泉で汗を流した後は、下道で約280km車を走らせて大雪山の登山口となる層雲峡に移動。中札内村の道の駅で肥料の匂いを嗅がせられながら美味しい蕎麦を食べた以外はノンストップで運転し、18時頃に層雲峡に到着。到着時点で大雨が降っていたが次第に止み、虹と綺麗な夕焼けも見る事が出来て、明日の天気は期待出来そうだ。行きつけの登山軒の味噌ラーメンの晩御飯を食べて、層雲峡の国道沿いにある屋根付きの無料駐車場で車中泊し、長い一日が終わった。
アポイ山麓公園登山者用駐車場(5:22)→登山届ポスト(5:28)→5合目山小屋(6:22/6:25)→馬の背(6:54)==分岐点(7:03)→アポイ岳(7:26/7:38)→幌満お花畑(8:06/8:24)→分岐点(8:43)→馬の背(9:23/9:30)→5合目山小屋(9:59)→登山届ポスト(10:41)→アポイ山麓公園登山者用駐車場(10:45)