登山記録 南アルプス(北部) 甲信越

北岳(2004年7月17-19日)

日程・行程

2004年7月17~19日

1日目:甲府駅-広河原-大樺沢二俣-小太郎尾根分岐-肩の小屋(テント泊)
2日目:肩の小屋-北岳-北岳山荘(テント泊)
3日目:北岳山荘-八本歯のコル-大樺沢二俣-広河原-甲府駅

1日目の記録

前回の中央アルプスに引き続き、今度は南アルプスデビューだ。南アルプスは日本で2番目に標高が高い北岳を始めとした3,000m峰が連なる山域だ。実は去年から北岳を狙っていたのだが、昨年は南アルプス林道の崩落事故により、山梨県側から登山口の広河原に行く手立てが無く断念。そして今年、崩落した岩盤を取り除く作業が終了し、開通日は海の日3連休の7月17日に決定した。恐らく南アルプスを楽しみにしていた登山者達で溢れ返るに違いないが、ついに念願の北岳に向けて出発だ。

甲府駅前ロータリー

深夜12時に甲府駅に付き、バス停に向かうと既に始発のバスを待つ登山者で一杯だ。始発のバスまで時間があるので地べたに銀マットを敷いて仮眠するが、駅前のロータリーはヤン車が走り回っており、うるさくて寝られたもんじゃない。3時になるとヤンキー達もいなくなり静かになるが、今度は「ぶらり途中下車の旅」のナレーターに声がそっくりなバス会社の爺ちゃんが自転車に乗ってやってきて、「広河原に行く人は、こっちに並んで~」と朝からちょっとうるさい。とはいえ、この爺ちゃんの乗客整理のおかげで深夜から待っている我々は何とか座って広河原に向かう事が出来たので感謝である。

バスで立っている人達には申し訳ないが、最後尾で熟睡させてもらった。どこでも寝られるというのは、登山において結構有効な特技なのかもしれない。2時間程のバスに揺られて進むと北岳登山の基点となる広河原に到着。ここで約半数が北岳へ、残りの半数は更にバスに乗って甲斐駒ヶ岳・仙丈ヶ岳登山の基点となる北沢峠へ向かっていった。

登山道は人人人で長蛇の列が続き、富士山並の登山者で一杯だ。遅い先行者のペースに併せて進むと逆に疲れてしまうので、さっさと抜かして先に進みたいのだが、抜いても抜いても先に人がいるため、抜かすのは諦めた。結局遅い先行者の後をダラダラと歩いて進み、大樺沢二俣に到着。

大樺沢二俣のパノラマ写真を見る

ザックを置いて休憩していると、バリバリと爆音を立ててヘリコプターがやって来て、北岳バットレスに向かって行った。あんな所に山小屋は無いので荷物の運搬ではなく、救助要請による出動だろう。負傷者は大丈夫だろうか。事故を起こした方には悪いが、このような救助シーンを見ると、「自分も気を付けねば」と思い、身が引き締まる思いになる。

展望の良い小太郎尾根分岐からは甲斐駒ヶ岳に鳳凰三山富士山と素晴らしい展望を望む事ができた。この尾根でこれだけ展望が良いのだから北岳山頂での展望に期待がかかる。が、天候は悪い方向に向かって行っており、山頂方面は既に雲の中なので、正直この時点で諦めモードに突入だ。

小太郎尾根分岐のパノラマ写真を見る

沢山の登山者と共に北岳の山頂を目指すが、途中で雨が降ってきたのでレインウェアを着て先へ進む。何気に去年から始めた登山であるが、去年は登山の際に一度も雨に降られなかったので、雨の中の登山は今回が初めてだ。初めての経験で嬉しいような悲しいような気持ちで進むと本降りとなり、今日は山頂を諦めて肩の小屋のテント場に幕営する事とした。

2日目の記録

5時に起きて天気を確認すると、雨が降っており、辺り一面ガスガスで視界が悪い。悪天なので山頂に立ってそのまま下山する事も考えたが、流石に3日連続悪天も無いだろう。「明日は晴れるさ」と、意味の無いプラス思考な考えをもってしまい、今日は停滞日とする事に決定。とはいえ一日中このテント場に居てもする事もなく暇であるため、暇潰しとして、山頂を越えた先にある北岳山荘に移動する事にした。写真は見知らぬ花好きのおっちゃんに写真撮影を勧められて撮影した南アルプス特産種の「タカネマンテマ」。

肩の小屋のテント場では風がなかったが、稜線に出ると物凄い強風で、まともに立って歩けない。ガスで視界も悪く、「このルートを初めて通る自分には無理かなぁ」と悩んでいると、後ろから中高年パーティーがやってきて平気な顔をして山頂に向かっていった。「中高年が頑張っているのに僕が頑張らないでどうする!」と奮起し、強風も何のそのと山頂を目指す。山頂に到着し、中高年パーティーに話を聞くと、何と僕の職場の隣のビルで働いている方々であり、びっくりだ。世間とは何とも狭いもので、これも何かの縁という事で入れたての温かいコーヒーまで頂いてしまった

山頂を下り北岳山荘に向かう途中で、中高年パーティーの一人が雷鳥を発見。生まれて初めて雷鳥を見て記念に写真を撮ろうかと思うが、あっという間にハイマツの下に隠れてしまった。雷鳥は天敵から避けるために、天候の悪い時に行動するというのは本当のようだ。北岳山荘に到着し、山荘に泊まる中高年パーティーにはお礼を言ってここでお別れ。テント場は既に一杯で埋まっていたため、山荘の入口前のスペースにテントを張り、明日の天候の回復を祈ってここで一夜を明かす。

3日目の記録

一日停滞したが、結局天候は昨日と一緒のガスガスだ。明日から仕事なので、流石に今日は下山しなければならない。北岳の山頂からの展望は最高だと聞いていたので、パノラマ写真に収められず残念だ。下山位は行きと違う道をと八本歯のコル経由で下山する事とした。北岳山荘を出発し、八本歯のコル方面に進むと、山の斜面一面に高山植物が咲いていて綺麗だった。

八本歯のコルに到着し、広河原方面に下山しているつもりだったのだが八本歯の頭の方向に進んでいたようで「そっちは違いますよ~」と優しい登山者に助けられた。ガスガスで視界が悪く、案内板も見ずに進む程集中力が欠如していたようだ。こんな事ではいつか事故るに違いない。これ以降は気を引き締めて下る事とした。

悪天のおかげで、高山植物の良い写真が撮れた。未だに分からないのだが、僕はミヤマキンバイとシナノキンバイの区別が付かない。知ってる方いたら教えて下さいませ。(シナノキンバイですね。2016年4月18日追記)

八本歯のコルを下るとガスから抜け出し、太陽が出ていた。どうやらガスがかかっていたのは山頂部だけで下界は晴れていたようだ。物凄い日差しを浴びながら雪渓横の登山道を下る。う~ん、向かいの鳳凰三山は雲がかかっておらず、今山頂に立っている方達が羨ましい。

趣味が写真だとガスガスで展望が利かなくても被写体は幾らでもあるので、暇しなくて良いものだ。帰りは花の写真や昆虫や沢の写真を撮りまくってゆっくりと下山した。吊り橋に到着し、振り返って北岳を望むとやっぱりまだガスがかかっていた。結局3連休のどの日に山頂に到達しても展望は望めなかったので「まぁ、こんな日もあるさ」と自分を慰めて帰路に向かった。

初めての南アルプスからの展望は望む事が出来なかったが、去年からの待望の日本第二位の標高の北岳の山頂に立つことが出来て最高だ。我が家からアクセスも良い場所にあるので、この山は今後も何度も来る事になるだろう。北岳は紅葉も綺麗との事なので、次回は秋にまた登る事にしよう。

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