日程・行程
2004年6月16日(水)
駒ヶ根駅(バス)しらび平(ロープウェー)千畳敷-宝剣山荘-木曽駒ヶ岳-宝剣山荘-宝剣岳-千畳敷(ロープウェー)しらび平(バス)駒ヶ根BT
記録
ついに中央アルプスデビューだ!平日にしか片付けられない用事が溜まっており、有給休暇を取得したのだが、前日に天気予報を見ると快晴の晴れマークが表示されていたため、用事など後回しにして「これは山に行くしかない!」と思い、夜行日帰り登山が可能な木曽駒ヶ岳に行く事とした。
会社を定時で上がり、でかザックを背負って新宿西口バスターミナルに到着すると、金曜日には見られる登山者の姿はそこには無く、「平日から山に行くのか、この暇人が!」とも思える視線を浴びてしまった(被害妄想とも言う)。深夜0時過ぎに駒ヶ根バスターミナルBTに到着し、本日の寝床の駒ヶ根駅に移動すると、既に営業は終了しているが、まだ明かりが着いており、明かるい中でステーションビバークの準備をする事が出来た。開放されている待合室の長椅子にエアーマットを敷き、風邪をひかないように着込んでここで一夜を明かす。それにしても登山を始めてからというもの、度胸と図々しさが身について、どんな場所でも寝られるようになってしまったのには、自分でも驚きだ。
早朝4時、無人の駅内に足音が響き渡る。実は駒ヶ根駅周辺では殺人事件が発生したらしく、電柱や掲示板等に張り紙が貼ってあり危険を感じていたのだが、何の事は無く、キオスクに新聞を配達に来たおじさんであった。結局この足音が目覚まし代わりとなり、やむなく起きる。電車の始発の時間が来ると先程まで無人だった駅も活気を取り戻し、朝7時になると子供を会社・学校に送り出す親達の車で駒ヶ根駅前のロータリーは大混雑だ。大混雑のロータリーで、しらび平行き 7:00の始発のバスに乗るが、乗っているのは僕と地元のお婆ちゃんの二人だけだ。「さすが平日!これだと山頂で快適に一人で写真撮影を楽しめるだろう」と期待するが、次のバス停で大量の中高年登山者が乗ってきてバスが満席になると、僕の夢は脆くも崩れ去った。平日にバスが満員になるとは、中高年登山ブーム恐るべし!である。
ロープウェーのしらび平駅に到着し、ロープウェーに乗って文明の力を借りてどんどん標高を稼ぐ。ロープウェーが千畳敷の駅に到着し、「我一番先に」と駆け足で外に出ると未だ雪が残る広大なカールが目の前に広がり、初めて見る光景に感動する。まるで巨大な山の岩肌を巨人がスプーンでえぐり取ったかのような光景に目を奪われ、余りの素晴らしさに「おぉー、すげぇー!」と大きな声で叫んでしまった程だ。このような素晴らしい自然が見られるのだから、どの登山者も皆アルプスに引き付けられるのだろう。アルプスの山々に引き付けられる登山者の気持ちが少し分かったような気がした。
千畳敷カールのパノラマ写真を見る1|千畳敷カールのパノラマ写真を見る2
余りにもカールが素晴らしく、また、カールも僕に「撮ってくれ」と言わんばかりにドーンと構えているため、結局千畳敷で1時間近くも写真を撮り、登山者が誰もいなくなる頃にやっと登り始める。登山道には雪が残っている箇所が幾つかあったが、踏み固められているので歩行には問題ない。カール上のガレ場の登山道をジグザグに登っていくと乗越浄土に到着。乗越浄土からの眺めは良く、南アルプス越しに富士山も頭を出している。乗越浄土を少し進むと宝剣山荘と天狗荘前に到着。何故天狗なのかと思うが、山荘前にある天狗の形をした奇岩を見て納得。だが、天狗よりも犬に見えてならないのは僕だけか。
乗越浄土のパノラマ写真を見る|宝剣山荘前のパノラマ写真を見る
天狗荘から木曽駒ヶ岳の間にある中岳の巻き道を通ると登山道脇に沢山の高山植物が咲いている。名前が分からないのが残念だが、高山植物の写真を撮りながら進むと、あっけなく木曽駒ヶ岳の山頂に到着してしまった。アルプス、そして3,000mに近い山だというのに、こんなに楽に山頂に到達して良いものだろうか。これなら僕が始めて登った二子山のほうが余程きつかった。とは言うものの、やはり展望はニ子山とは比べ物にならず、御岳山に乗鞍岳、その後ろに北アルプス、そして南アルプスに富士山まで見渡せる360度の素晴らしい大パノラマが広がり最高だ。
木曽駒ヶ岳のパノラマ写真を見る1|木曽駒ヶ岳のパノラマ写真を見る2|木曽駒ヶ岳のパノラマ写真を見る3|木曽駒ヶ岳のパノラマ写真を見る4
木曽駒ヶ岳からの展望。憧れの北・南アルプスも見える最高の展望所だ
大パノラマを見ながら昼食を食べ、パノラマ写真を飽きるほど撮りまくり、宝剣岳を目指す。先程迂回した中岳のピークを越え、天狗荘に到着し、ここから宝剣岳への登りが始まる。宝剣岳に登ろうとすると、後ろで二人組の女性が「あれってワンちゃんよねぇ」と言っている。どうやら天狗岩が犬に見えたのは僕だけではなかったようだ。宝剣岳への道を歩いていると、岩ヒバリが岩の上をウロチョロしていた。人間慣れしているのか近付いても逃げようともせず、何とも愛らしい。
宝剣岳への道は地図には「危険」「滑落事故多し」と記載され、岩場の登りと鎖場が幾つかあるが、油断せずに慎重に歩けば問題は無いだろう。とはいえ、登山道の谷側はスッパリと切れており、ふざけて歩いてつまずいたりすると、転落・即死亡が待ち受けているため、やはり注意が必要だ。慎重に進み、宝剣岳の山頂に到着すると、宝剣岳の山名の所以であろう山頂に突き刺す尖った大岩を目にする。いつもながら思うのだが、金峰山の五丈岩といい、よくも山頂に都合良くこのような奇岩が存在するものだと関心する。宝剣岳の山頂は狭く、後から来る登山者でゆっくりと休憩も出来ないので、パノラマ写真を撮って、早々に下山する。
宝剣岳を下り、極楽平への稜線上から来た道を振り返ると、巨大な岩山の宝剣岳の全容を見る事が出来た。確かにこれを見ると危険と書かざるを得ないほどの山容だ。岩同士が重なり合って出来た自然のトンネルを通過すると、三ノ沢岳への分岐に到着。ここにはこの山で亡くなった方々の遭難の碑があり、ここから残り少しの道を尻の穴を引き締めて下る。10分程進むと極楽平に到着し、ここまで来ると危険の心配は無い。極楽平から千畳敷までは階段が用意されているのだが、残雪に覆われており、表面に太陽の日差しで解けた水が流れているので、これがまた滑る。何度か転びそうになるが、慎重に階段を下りきると、スタート地点の千畳敷駅に到着した。
三ノ沢岳分岐のパノラマ写真を見る|極楽浄土のパノラマ写真を見る
ついに念願のアルプスの1座を踏む事が出来た。やはり3,000m峰のスケールは大きく、写真を撮っていても楽しいし、撮影意欲が沸き溢れてくる。僕の気持ちはもうアルプスに向かっている。「アルプスガイドブック」なる本も買った事だし、今年の夏はアルプスの山々に登りまくるのだ!