登山記録 南アルプス(南部) 甲信越

悪沢岳・赤石岳(2006年10月20-21日)

登山日

2006年10月20日(金)~22日(日)

行程

<1日目>
椹島ロッジ~小石下~清水平~駒鳥池~千枚小屋(冬季小屋泊)

<2日目>
千枚小屋~千枚岳~悪沢岳~中岳避難小屋~荒川中岳~荒川小屋~大聖寺平~小赤石岳~赤石岳~赤石小屋~椹島ロッジ(小屋泊)

<3日目>
椹島ロッジ~鳥森山~椹島ロッジ

1日目の記録

11:43

東京駅から新幹線に乗り、静岡駅で下車。今度は静岡駅からバスに乗り換えて、畑薙第一ダムまでやってきた。と簡単に言うが、静岡駅を8時18分に出発、畑薙第一ダムに11時39分に到着で、何と3時間もバスに乗ってました。長距離なのでさすがにトイレ休憩が2回あったが、もうお尻が痛くて痛くて大変。これなら山に登っているほうが楽だ。しかも更にここから東海フォレストのバス(東海フォレストの山小屋に泊まった人のみが利用可)に乗り換え、椹島ロッジまで約1時間もかかるのだから、もう大変だ。

12:35

椹島ロッジまでの道は舗装されておらず、車も大型バスではなくバンで安定感がなく、ロデオ状態で揺られながら椹島ロッジへ向かう。畑薙第一ダムまでは自分以外に単独行者が2人乗っていたが、その2人は聖岳を目指すとの事で、東海フォレストのバンには乗らずに僕一人だけバンに乗って椹島ロッジに向かう。写真は椹島ロッジに向かう途中で撮影した赤石岳。一人しか乗っていないので、運転手さんにお願いして撮影させて貰いました。

12:44

バンが椹島ロッジに近づくと、椹島ロッジの余りの規模の大きさにちょっとびっくり。いわゆる登山小屋が1軒あるだけを想像していたのだが、登山小屋の他に個室の宿泊棟は4棟も建っているし、案内所もあるし、写真の綺麗なレストハウスもあるしで、登山基地って感じで正直おったまげました。1日目はここで宿泊するか、千枚小屋まで頑張って登ってしまうか迷ったが、「少しでも先に前進しておけば次の日は楽になるだろう」という事で、レストハウス前の水道で水を汲み、登山口へ向かう。(全然次の日は楽にならなかったんですけどね・・・。)

12:55

数分歩くと、千枚岳・悪沢岳登山口に到着。念のため熊鈴をザックに付けて、先に進む。

13:02

吊り橋を渡って対岸の登山道に移動。

13:50

千枚岳への登山道は余り展望が利かず、木々の合間から山が見えるだけだ。唯一木々に遮られずに撮影できた箇所がこの場所で、遠くに悪沢岳?(千枚岳かな?)が見えた。

14:03

登山道は、一部中部電力のダム施設工事の車両が通る林道と交差しており、一旦車道に出る。静岡駅から4時間もかけて相当な山奥にやって来たのに、ここでも工事の音が聞こえるんだから、何だかなぁ~って感じだ。

14:06

車道を少し歩くと、登山道に復帰するための階段が現れる。

15:15

熊からの恐怖に怯えながら、何とか清水平に到着。というのも、清水平の手前辺りで熊と遭遇。熊鈴を鳴らしながら歩いていたので安心しきっていたのだが、後ろの下斜面から「ガサゴソ」と物音が聞こえてきて、よーく見ると熊が歩いていた。(って、すれ違ってるし・・・。)事前に熊に人間の存在を知らせるために鈴を鳴らしていたのに、後ろから現れたもんだからもうビビリまくり。しかも熊との距離も20~30mと近くて、はっきりと熊の顔も見えるしで、もう小便ちびりそうでした。熊は前足と後足の長さの違いから、登りに強く下りを苦手としているのは知っているが、僕は熊よりも上にいて下れば自らやられに行くようなもんだし、登って背を向けて逃げても追い掛けられたら勝ち目は無い。熊鈴を鳴らしても大きな声で叫んでも逃げる気配はなく、対峙する事約1分。「何かこいつビビってるみたいだし、可哀想だから逃げてやるか」といった感じで熊のほうから斜面を下っていってくれたのでなんとか助かった。もう何なんだろう今年は。大朝日岳で熊に吼えられ、北ノ俣岳でホカホカの足跡を発見し、そして今回は熊とばったり遭遇。あ~、とにかく怖かった~。

15:58

三角点のある蕨段に到着。三角点って測量のための基準点だと思うのだが、木々が生い茂っていて視界も無いし、基準にならないような気がするのは僕だけか。

17:14

駒鳥池に到着。地図を見る限りでは近くに池があるのだろうが、もう真っ暗で探しに行く余裕もありません。もう既に日も暮れているが、シャリバテしそうな感じなので、ここでパンを食べながら小休止する。

17:53

駒鳥池を北に進み、方向を西に変えて進むと千枚小屋に到着。ちなみに、駒鳥池から先は真っ暗闇でかなり不気味でした。しかもそんな状況なのに、鹿がいきなり近くで「キャオーン!」と大きな声で鳴きだすもんだから、びびって泣きそうになりました・・・。熊の事もあったし・・・。後々東海フォレストの運転手さんに聞いたら、雄鹿は発情すると鳴きだすらしいです。頼むから遠くで鳴いてくれ~。

17:55

冬季小屋に入る前に、トイレの場所を確認。冬用のトイレは小屋からすぐの所にあるが、傾いているし、こんな作りで一冬越せるのか疑問だ。

18:02

既に営業終了の千枚小屋の冬季小屋は、通常の小屋の2階の一部を開放していて綺麗で快適だ。余りに汚い冬季小屋の場合は、テントを張って寝ようと思ってテントも持ってきているが、床はフローリングで綺麗なのでテントの出番はない。人気の山域の南アルプスなので、先客でもいそうなものだが誰もおらず、話し相手もいないのでカレーを作って食べて明日に備えて早々に寝た。

2日目の記録

04:56

昨日の夜によく考えたら、初日に椹島ロッジに泊まらなかった事で、今日椹島ロッジに泊まらないと畑薙第一ダムまでのバスに乗せてもらえない事が判明。この先にある山小屋は全て営業終了しているし、今日は何が何でも椹島ロッジまで下らないとアウトなので、携帯と時計の目覚ましを3時半にセットして4時に出発。・・・の予定だったのだが二度寝してしまい、結局出発はこの時間になってしまった。

05:07

小屋近くにある水場のパイプからは水は流れていないが、パイプの下に細いが少しだけ水が出ていたのでここで水を汲む。

05:22

出発の時間が遅れてゆっくりと写真を撮っている時間も無いのだが、余りにも富士山が素晴らしいので、三脚を立てて撮影。

05:31

二軒小屋との分岐に到着。いつか二軒小屋にも泊まってみたいなぁ。

05:39

段々と明るくなってきた頃に稜線に到達。あとは大好きな展望の利く稜線歩きなので、気分も盛り上がる。

05:48

千枚岳に到着。雲の上に富士山が顔を出して、今にも太陽が顔を出しそうな瞬間をパノラマ写真に収める。ん~、それにしてもいつ見てもこの看板は、墓石にしか見えないです・・・。

千枚岳のパノラマ写真を見る

05:57

富士山の横から太陽が顔を出す。今年の年賀ハガキは典型的だけどこの写真を使おうかなぁ。

06:12

赤石岳も朝日を浴びて真っ赤に燃える。

06:47

モルゲンロートタイムが終わると真っ青な空となり、なだらかな山頂部の丸山に到着。

丸山のパノラマ写真を見る

07:20

丸山まではしっかりと踏み固められた典型的な稜線歩きだったのだが、そこから先は大きな岩がゴロゴロ転がっている岩稜帯の登山道となり、岩の上を飛びながら歩いていると南アルプス第3位の高峰の悪沢岳に到着
だ。悪沢岳の山頂からは、「ここでパノラマを撮らずに何を撮る!」という程の360度の大パノラマが目の前に広がり、たまらずにパノラマ写真を撮影。

荒川東岳のパノラマ写真を見る1荒川東岳のパノラマ写真を見る2

07:23

さすがに百名山に選ばれる事だけあって、素晴らしい山容の赤石岳。

07:25

白根三山、塩見岳方面の展望もばっちり。遠くに甲斐駒ヶ岳も仙丈ヶ岳も見えました。

07:37

せっかくの晴れの山頂なのでゆっくりしたいのだが、まだまだ先は長いので次の中岳に向かう。ここから先の中岳までは一旦下って登り返し。そして中岳
から荒川小屋までこれまた相当下り、また赤石岳まで登り返さなければならない。う~、辛い。

荒川東岳直下のパノラマ写真を見る

08:24

中岳避難小屋に到着。ここも千枚小屋と同じく冬季小屋として開放されていた。

08:28

中岳避難小屋のトイレは男性用の小のみ扉が開いていたが、それ以外は鍵がかかっていて利用不可だった。

08:32

小屋から少し歩くと中岳の山頂だ。悪沢岳の山頂の展望も良かったが、個人的には中岳のパノラマの方が上に思えた。サイドに悪沢岳と赤石岳、南アルプス北部と南部の山々の展望に、笊ヶ岳と青薙山の稜線、中央アルプス、そして何と言っても富士山の配置が絶妙でバランスが良いのだ。

荒川中岳のパノラマ写真を見る

08:55

三伏峠へ至る分岐を通過。今年は北岳から赤石岳まで縦走しようとしたが、ヘタレなので歩けずに塩見岳止まりだったのを思い出す。

09:06

地図には記載されていない「展望台」にてパノラマ写真を撮影。中岳から結構下ってきたのだが、荒川小屋はまだまだ遥か先で、しかも次に登る赤石岳までの登りも見えるもんだから、もうげんなりだ。

荒川中岳-荒川小屋間登山道のパノラマ写真を見る

09:27

荒川小屋に向かう途中で水場を発見。流れは相当細いが、汲めない程ではない。上手く小石をどかして水筒を設置すれば数十秒で一杯になる位は流れていた。

09:42

ひたすら勿体無い位斜面を下りきると、荒川小屋に到着。「冬季は下の青い屋根の小屋を使用してください」と書いてあるので、冬季小屋を見学に行く。

09:47

冬季小屋に向かう途中で、トイレを発見。鍵は一部開いているので冬季も安心だ。ただ、無造作爆撃タイプのトイレなので、雪が解けて暖かくなったら相当匂いそうだ。下のほうには沢もあるし、大丈夫なのかねぇ。

09:51

青い屋根の荒川小屋の冬季小屋を見学。

中は結構綺麗に片付いており、全然普通に泊まれそうだ。

10:17

荒川小屋の見学を終え、ついに赤石岳方面への登りに取り掛かる。

10:23

荒川小屋から少し急傾斜を登り、尾根をトラバースするような感じで登山道を進むと大聖寺平に到着。

10:25

後ろを振り返ると悪沢岳と中岳が遠くに見えた。

11:43

大聖平からのつづら折りの急登を登りきると、小赤石岳に到着。ここまでの道のりはこの山行で一番辛かった。というのも、僕は疲れると周りが見えなくなってよく道を間違えるのだが、今回も登山道じゃない瓦礫帯の道を直登して登っており、時間も体力も無駄に消耗してしまった。気付いたらいつの間にか登山道を外していて、もう後戻りできない程進んでいたりするので、いつか痛い目に会いそうな予感。本当に気を付けねば。そしてシャリバテしてしまったので、宇都宮のよっしー直伝のスティックサラミを一気に3本食べて復活。赤石岳に向かう。

小赤石岳のパノラマ写真を見る

12:37

小赤石岳から赤石岳向かうと途中で赤石小屋に至る分岐に到着。風に飛ばされないようにハイマツの下にザックをデポして、水とカメラだけを持って赤石岳に登ると、荷物が無いためかあっという間に山頂に到着。残念ながら小赤石岳付近からガスってきて富士山も見えず、南部の視界が悪くて良いパノラマは撮影できなかった。

赤石岳のパノラマ写真を見る1

12:40

赤石岳山頂直下にある赤石岳避難小屋も見えたが、時間も無いので見学はできなかった。山頂部は風で相当寒く、汗が冷えて歯もガチガチいってきたので、風邪をひくまえにデポ地点に戻る。

赤石岳のパノラマ写真を見る2

12:54

赤石小屋との分岐点に戻ってきた。デポしておいたザックを回収して、椹島ロッジまでの標高差約1,900mを下る。

13:18

一気に急下降し、途中で岩盤の沢に到着。地図に水場と記載されているので飲めるのだろうが、上部に赤石岳避難小屋もあるし、何だか水を飲む気にはならなかった。

14:09

ラクダの背と呼ばれる尾根の南側をスチール製の階段等を利用してトラバースすると、ハイマツに覆われた富士見平に到着。富士山は見えなかったが、ここに降りてくる頃には赤石岳から雲が取れていて悪沢岳も交えた素晴らしい景観が広がっていた。

富士見平のパノラマ写真を見る

14:13

富士見平を下ると赤石岳は見えなくなるので、最後に赤石岳方面を撮影。

14:34

富士見平から樹林帯を緩やかに下ると、赤石小屋に到着。小屋の内部を見学したい所だが、ここはまだまだ標高は2,500m付近。椹島ロッジまでの道のりは長いので休憩せずにそのまま下る。

15:38

赤石小屋と椹島の中間地点の樺段に到着。モタモタしていると日が暮れるかもしれないので、首にぶら下げているカメラバックをザックにしまい、ここから先は携帯電話のカメラでの撮影に切り替える。

16:40

樺段からの展望の利かない急な下りを下りきると鉄の梯子が見えてきて林道に出て、何とか暗くなる前に椹島ロッジに無事到着。昨日から熊以外誰一人とも出会っていない静かな山旅だったのだが、最後の最後で赤石岳に登ってきたと思われる登山者グループに出会う事ができた。「今日は椹島ロッジに泊まるんですか?」と聞いたら、「泊まらずに車で帰る」というので、「え?でも一般車は通行できないんですよね?」と更に聞くと、「表の道があるけど裏の道もあるのだよ」というので、この登山者グループは恐らく工事関係者から通行許可証を持った車を借りてやって来たのだろう。

17:00

受付が遅かったため晩御飯には間に合わず、仕方が無いので素泊まりする事にした。登山小屋の素泊まりが4,000円、ロッジというか宿泊棟の素泊まりが4,500円だったので、迷わず綺麗な宿泊棟を選択。一番風呂に入って二日間の汗を流し、残った食材で晩飯を自炊してお腹が一杯になると、12時間近く歩いたせいか疲れてあっという間に寝てしまった。

3日目の記録

07:23

始発のバスは6時台にあるのだが、それに乗っても静岡行きのバスへ乗り継ぐのは昼過ぎになるので、10時発のバスを待つ事にする。今日はもう帰るだけなので部屋でゆっくりしていようと思っていたのだが、小屋の従業員に「チェックアウトは8時です」と言われてしまい、行き場所がなくなってしまったので、ロッジの目の前にある鳥森山に登る事にした。

07:48

樹林帯のつづら折りの道をひたすら登ると、木々の合間から赤石岳が見えてきた。

08:02

登山道は一部枯葉に隠れているものの、きちんと整備されていて迷う事はない。

08:21

終始展望の利かない樹林帯の登山道を登りきると鳥森山に到着。鳥森山の山頂には方位指示盤とあずまやがあり、180度分の展望しか利かないが、赤石岳と聖岳と上河内岳が見えるなかなかの展望だ。

鳥森山のパノラマ写真を見る

08:23

鳥森山より、聖岳を撮影。

お次は赤石岳。

紅葉をズームアップ。写真を沢山撮影して満足したので椹島ロッジに戻る。

09:39

椹島ロッジに戻ってきたが、10時のバスまでに時間があるので、ロッジ付近で真っ赤に染まったドウダンツツジの紅葉などを撮影して楽しむ。

09:46

レストハウスでロッジの領収書を見せて乗車カードを貰い、10時発のバスに乗って畑薙第一ダムに向かう。

10:13

バスの窓を開けて紅葉初めの風景を撮影。

11:06 白樺荘

この時期は静岡駅行きのバスの乗り継ぎが悪いので、運転手さんが気を利かせて、畑薙第一ダムの先の白樺荘まで無料で送ってくれた。白樺荘はなんと温泉代金が無料の変わった温泉なのだが、ひっきりなしにやって来る温泉客で食堂が大繁盛なので、十分温泉を無料にしても元が取れるのだろう。

13:01 白樺荘上バス停

約2時間程白樺荘でまったりして、白樺荘を少し上に上がった所にあるバス停から13:11の静岡駅行きのバスに乗って帰路についた。

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