日程・行程
2月12日(土)
立川駅-大月駅-富士吉田駅-馬返し-佐藤小屋(テント泊)
2月13日(日)
佐藤小屋-七合五勺鳥居館-佐藤小屋-馬返し-中の茶屋-富士吉田駅-八王子駅
1日目の記録
山頂付近の突風やホワイトアウトにより毎年死亡事故が発生している厳冬期の富士山であるが、太平洋寄りの気候で晴天に恵まれ、運が良ければ風が無いケースもあると聞いていたので晴れの週末を狙って富士山に挑む事とした。
8:30 富士吉田駅
電車を乗り継ぎ、8:30に富士吉田駅に到着。ホームからはこれから目指す富士山が見え、山頂付近には風雪が舞っており、夏と違い何とも厳しい山容だ。
9:01 馬返し付近(1,430m)
富士吉田駅からタクシーで馬返しまでやってきた(3,500円位)。道路の氷結具合では中の茶屋を少し行った所で客を降ろす事もあるらしいが、今日は道路の具合が良かったので馬返し付近まで来られたとの事だ。ここからスパッツを取り付け、アイゼン無しで佐藤小屋を目指す。
9:17 一合目 鈴原天照大神社(1,520m)
この時期に富士山に入る人間なんていないだろうと思いトレースは期待していなかったのだが、登山道はかなり踏み固められており、とても歩きやすい。
9:45 二合目 富士御室浅間神社(1,700m)
無事怪我無く下山出来るよう祈って先へ進む。
10:05 三合目 三軒茶屋跡(1,840m)
三合目を示す標識は九割雪で埋まっていた。登山道の左右に廃墟となった歴史を感じさせる茶屋があり、富士スバルラインが出来るまでのかつての吉田口登山道の栄光はもう遠い昔のように感じられた。
10:43 五合目 井上小屋(2,150m)
四合目がどこだか分からずに、五合目御座石・井上小屋に到着。この辺まで来ると、木々の合間から富士吉田市の展望がちらほら見られるようになり、気分良く歩けるようになる。本日初の展望の記念にパノラマ写真を撮影し、佐藤小屋に向かう。
11:31 佐藤小屋 (2,230m)
樹林帯を抜け、富士スバルラインをまたいで少し登ると佐藤小屋に到着。この3連休は営業をするとの情報を仕入れて来ていたのだが、僕が到着した頃にはまだ閉まっていた。一人ぶらぶら六合目付近まで行ったりして今夜の寝場所を探すが、適当な場所は無く、結局佐藤小屋の前の広場にテントを張る事にした。午後になると小屋の管理人や、合計30人近くの雪上訓練目的の大パーティーもやってきて、佐藤小屋内は大盛況となった。
2日目の記録
6:57 佐藤小屋出発
天気予報では午前中は晴れるが午後から曇りの予報であるため、雲がやってくる前に登頂し下山しなければならない。という事で深夜3時に出発して頂上に辿り付き、午前中の内に佐藤小屋に戻って来るというプランを立てていた。しかしながら明け方まで、テントのポールが折れるのでは無いかと思う程の強風が収まらず、結局風が収まった7:00頃に出発となってしまった。もうこの時点で歩くのが遅い僕の山頂への到達は不可能となったが、とりあえず行ける所まで行って、午前中に佐藤小屋に戻って来るというプランに変更した。
7:09 六角堂
佐藤小屋裏手の登山道をジグザグに登ると、六角堂に到着。六角堂裏手の樹林帯の登山道をトレースに従いジグザグに登ると森林限界を抜けて視界が開けるようになる。吉田口ルートは初めて歩くのだが、噂に聞いていた通り山小屋が多く、下から見上げるとまるで要塞のようだ。
7:31六合目 富士山安全指導センター(2,390m)
森林限界を抜けると登山道は雪が無くなり、路肩に雪は残るが夏道同様の砂礫の道となる。タクシーの運転手曰く「今年は雪が多い」との事であったが、富士山の場合は余りの強風に登山道に雪が付着しないのだろうか。雪の無い登山道はアイゼン無しで登ったほうが楽に歩けるであろうが、僕は一本締めアイゼンを使用しており、着脱が面倒なのでそのまま砂礫の上をアイゼンを付けたまま登る。七合目の山小屋付近からは積雪が多くなり、一部氷化している個所もあるため、アイゼンが必要であった。
9:23 鳥居まであと少し
この辺はもう既に強風の嵐である。写真では快適な登山日和に見えるかもしれないが、風が台風並みに強く、目も開けていられないのだ。風さえ無ければ快適な登山日和なのに何だか悔しいのである。
9:30 七合五勺 鳥居館 (2,860m)
赤い鳥居が目印となる鳥居館に到着。七合目以降は強風が吹き荒んでおり、歩行を妨げられるが、腰を入れて何とかここまで来られる事が出来た。上方を眺めると八合五勺程までは何とか行けそうだが、その先の九合付近では強風により風雪が舞っており、とても自分には行けそうな気がしないため、無理せずにここで下山を決意する。とりあえず記念として三脚を押さえつけながらパノラマ写真を撮影し、後から到着した後続パーティーに記念写真を撮影して貰い、下山する事にした。
10:00 下山する
赤い鳥居下の石の階段をおり、下山する。後続パーティーもこれ以上は無理と判断し、ここで下山する事にしたようだ。
10:15 七合目付近のクラストした斜面
下山途中で、クラストした滑落停止訓練に良さげな斜面を見つけたため、30分程訓練を行う。滑落する時はどの状態で滑落するかなんて予想も付かないので、うつ伏せ・あお向けでそれぞれ足から・頭からの4通りのパターンを何十回も繰り返し斜面を滑り落ちて訓練を行ったが、結果として「滑落後すぐにピッケルを斜面に打ち込まないと止まらない」という事が分かった。ちなみにそれは氷化していない斜面での話だ。氷化した斜面ではピッケルは打ち込めず、氷の斜面をガリガリ削るだけで停止出来ないだろうから、いかに耐風姿勢やアイゼンワークなどのよろめかない・転ばない・滑落しない歩行技術を身に付けるかが重要となるのではないだろうか。
11:56 佐藤小屋
昼までに時間があったので写真を撮りまくりながら下山し、無事佐藤小屋に帰還。七合五勺で吹いていた歩行を妨げる程の強風も、佐藤小屋まで降りてくると無風となってしまうのだから変なものだ。八ヶ岳、富士吉田市の展望を眺めながらラーメンを作って食べ、ちらかったテント内の荷物をザックに詰め込み、テントを撤収して下山する。
13:57 馬返し
馬返しに到着するや否や凍った道路で思い切り転んでしまった。何故山で転ばず地上で転ぶのかといつも思うが、山から降りた余裕で単に注意力が不足しているのだろう。馬返しでは佐藤小屋付近で行われていた雪上訓練グループの方々が沢山おり、帰り支度を整えていた。その中に七合目付近で僕を追い抜いて山頂に向かったエキスパートらしき2人組がおり、「山頂はどうでしたか?」と聞くと「風が強くて途中で引き返したよ」との事であった。やっぱり雪山初心者を山頂まで登らせてくれるほど、冬富士は甘くなかったようだ。ここでタクシーを呼んでもよいが、中の茶屋から乗ったほうが割安だろうと思い、所々凍った道路を中の茶屋に向かって歩く事にした。
14:36 中の茶屋(1,100m)
中の茶屋に到着する20分程前にタクシー会社に連絡すると、中の茶屋に到着すると同時にタクシーがやって来て、待つ事無くタクシーに乗り込む事が出来た(2,090円)。タクシーの運転手に「富士吉田の名物は?」と聞くと「やっぱりうどんだねぇ」と言うので、運転手お気に入りの駅前にあるうどん屋で手打ちの鍋焼きうどんを食べ、帰路に向かった。ちなみに帰りに富士吉田駅から富士山を見ると、巨大な雲に覆われており、あのまま山頂に向かっていたら無事下山出来たかどうか分からなかっただろう。自分の判断は間違っていなかったのだ。
山頂にも到達せず、到達地点も3,000mに満たない七合五勺と中途半端な山行となってしまったが、冬富士の様子を知る事が出来たので大満足だ。雪山初心者が一度の山行で山頂に立てる程冬富士は甘くない。今回の経験でコツを掴んだので、4月までに再度高気圧に覆われた週末を狙って山頂を目指す事にしよう。
参考情報(2005年1月11日当時)
佐藤小屋テント場の参考情報は以下の通り。
・幕営代500円。
・頼めば水は貰えた。
・小屋外にトイレ有り。(和式×1、洋式×1、紙はあるがすぐに無くなった。)
・テント場に雪は少なく地表はガチガチに凍結しているため、棒・クロスペグ両方利用不可。
・大きな石はテント一張り分しか落ちていないため、小屋前に積み重なっている木材を借用して張り綱を止めました。